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鵺の呼び声ぷち 09

ぬえ霖紅魔郷編その2。
もっとぬえ霖は増えてもいいと思うんだ。
それまでせめて僕が増やすしか……。


霖之助 ぬえ








「さあ、料理の時間だよ!」
「そしてあたいは食事の時間!」
「チルノちゃん、もう少し静かに……」


 扉が開いた瞬間から、店内はにわかに騒がしくなった。


「……ぬえ、いつも言ってるだろう。
 店に入るときはもっと落ち着いてだね。
 商品が倒れるじゃないか」
「大丈夫だよ。おっとっと」


 早速落としそうになった商品を、空中でキャッチ。
 さすが妖怪と言ったところか。反応速度が尋常ではない。

 ……うしろの妖精ふたりは、そうも行かないようだが。


「あ、落ちた」
「わわわっ」
「やれやれ……。
 とにかく、いらっしゃい。チルノ、大妖精」
「おー!」
「こんにちは……すみません」


 まあ、あの辺はそろそろ処分しようと思っていたものだから特に問題はないのだが。
 ……一応そのあたりも、ぬえは考えているようだ。


「それより霖之助、見てよ」


 霖之助の前に辿り着いた三人は、それぞれ持っていた籠をカウンターの上に乗せる。

 氷の固まりが入っていた。
 その中に見えるのは……。


「ほう、鮎か。
 釣ってきたのかい?」
「うん。
 それで運んでもらったの」
「あたいが凍らせたんだ!
 しんせんなほうがおいしいって」


 胸を張るチルノ。
 よく見ると、中まで完全に氷というわけではないようだ。

 なるほど、これなら目の荒い籠でも魚を運ぶことが出来る。


「で、料理作って」
「……作るのは構わないがね。
 君たち、そもそも食事なんて必要無いだろうに」


 彼自身、食べなくても平気な体質だった。
 とはいえしばらく何も食べていないせいか、目の前の鮎が妙に美味しそうに見える。


「それはそれ、これはこれ。
 食材があれば食べた方がいいでしょ?」
「まあ、せっかくぬえが釣ってきたんだし」


 そこまで言って、ふと首を傾げた。


「そもそも、なぜ君たちは一緒にいるんだい?
 知り合いだった……とは思えないのだが」
「ん? ん~っと……」


 霖之助の言葉に、ぬえとチルノは顔を見合わせる。


「なんでだっけ」
「さぁ、あたいに聞かれても」
「えっと、釣りをしてるところを見かけて……」


 横から口を挟んだ大妖精の言葉に、ふたりはポンと手を打ち鳴らす。


「あ~、そういえばそうだったわね」
「だけどどうでもいいわね」


 チルノのわかりやすい言葉に、思わず苦笑する。


「確かにその通りだ。
 なんにせよ、知り合いが増えるのはいいことだよ。
 じゃあ、作ってくるからしばらく待っているといい」


 そう言うと霖之助は、籠を抱え上げる。


「……この氷は解除できないのかな?」
「ん? 割れば解決するよ。
 だってあたいさいきょうだもん」
「ふむ、なるほど」


 何が最強なのかはわからなかったが、それで解決するなら確かに便利だった。
 霖之助は炊事場へと移動すると、チルノの言うとおり氷の中から鮎を取り出す。

 しかし結構な数の鮎だ。
 台所に立ち、頭の中で考えを巡らせる。

 和風にするか洋風にするか。
 中華風も捨てがたいし、フランス風というのもいいかもしれない。


 なにより、最近使い方を知った圧力鍋の威力を見せるいいチャンスだ。


 最初はただの鍋だと思い、安い値で売っていたのだが……。
 商品棚に並んでいるそれを見て、山の現人神が驚き、早速購入していった。

 その喜びように理由を尋ねたところ、外の世界ではわりと高級品なタイプの鍋らしい。
 何でも、『上位モデル』という話しだった。

 霖之助はこれ幸いにと使い方を尋ね、晴れてこの圧力鍋は非売品の仲間入りを果たした。

 余った鍋も、相応の値段へと切り替えられていた。
 早苗にはお礼としてもとの値段で譲ったのだが……。
 ……危うく買い占められるところだった。



「霖之助さん」
「ん?」


 物思いに耽っていた霖之助は、後ろからの声に振り向く。

 緑の髪をサイドにまとめた少女……大妖精が、恐る恐ると言った様子で切り出してくる。


「私、お手伝いしていいですか?
 その、あんまり何もしてないので……」


 ぬえが釣り、チルノが凍らせた鮎だ。
 運んできただけでは、彼女の中では仕事のうちに入らないらしい。


「そうか、じゃあ頼もうかな。
 ご飯を炊いてくれるかい? やはりここは和食で……」
「あー!」


 霖之助の言葉を遮るように、声が響いた。
 台所に現れたのは、釈然としない表情のぬえ。


「私が手伝おうとすると、いつも渋るのに。
 なんでよー」
「君の場合……。
 ……いや、彼女はまだなにもしていないと言うからね。
 働かざる者食うべからず。
 それとも、ぬえは大妖精に食事をするなと言いたいのかい?」
「そういうわけじゃないけど……」


 そこでぬえは首を傾げる。


「ていうか、料理できるの? 妖精なのに」
「大丈夫だよ、大ちゃんはなんだってうまいから」


 なぜか自信満々に答えるチルノに、霖之助は思わず苦笑した。
 まあ、友達同士仲がいいのはいいことだ。


「手伝いというのなら、参考程度に聞いておこうかな」
「ん? なになに?」


 霖之助の言葉に、ぬえは嬉しそうに振り返る。


「君だったらこの状況で、どんな料理を用意する?」
「えーとね」


 ぬえは鮎を見た。
 曇り無い瞳で、きっぱりと断言する。


「カレーうどんかな」







「あ、おいしい」
「うん。さすが大ちゃん」
「ありがとう、チルノちゃん。
 でも霖之助さんがほとんどやってくれたから……」
「いやいや、謙遜の必要はないよ。
 この甘露煮はタレが秘訣でね……」


 しかし、久し振りにきちんと料理をした気がする。
 霖之助は料理の蘊蓄を語りながら、箸を進めた。

 それにしても、大妖精がかなりの料理上手だったのは予想外だった。
 あれならまた手伝いを頼みたいレベルだ。


「私も手伝えばもっと美味しくなったと思うんだけど」


 その言葉に、思わず霖之助は顔を背ける。


「あれ? そこは同意するところだと思うんだけど」
「ぬえ、大変言いにくいんだが……」


 いつかは言わなければならないことだと思っていた。
 これ以上先延ばしにしても、良くないだろう。


「君が普段やっているのは、手伝いじゃなくてだね、その」


 手伝いというのは、文字通り手を助けること、つまりもとの動きの延長上でなくてはならない。
 しかしぬえが間に入ると、なぜかいつも当初と違うものが出来上がってしまうのだ。
 意図してやっているのはか定かではないのだが。

 ……不思議とあまり外れな料理にならないことが救いだった。


「いや、美味しくなることが多いから構わないんだけどね。
 たまには普通に料理したいと思うわけだ。
 ……ああ、決して邪魔していると言っているわけじゃ……」
「がーん」
「あ、口で言った」
「はじめて聞きました」


 どうでもいいことに感心するふたりをよそに、ぬえは身体をわななかせる。


「霖之助の……」


 キッと霖之助を睨むぬえ。
 ……前もこんなことがあった気がする


「バカー!」


 ひとつ叫ぶと、彼女はものすごい速度で飛んで行ってしまった。


「ああ、ぬえさん……。大変、早く……」
「心配しなくていいよ、大妖精」


 腰を浮かしかける大妖精に、しかし霖之助は首を振る。


「まだ食事の途中だからね。すぐに戻ってくるさ」


 言って、霖之助は皿の魚を人数分により分けた。
 それにこういった事態は初めてというわけではない。

 だからこそ、落ち着いて対処できる。


「……よくわかってるんですね」
「まあ、いい加減長い付き合いになってきたからね」
「あ、あたいしってる!」


 その言葉に、チルノが目を輝かせた。

 胸を張って叫ぶ。
 ……自信満々に。


「そういうの、ふーふっていうんだって!」

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相変わらず道草さんのぬえ霖いいのういいのう

チルノGJ
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