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愛という名の忠誠心

バナナの皮で転んでも。
咲夜さんはかなり天然の入った乙女という訴えは思い出したように続けていこうと思います。

ゆうまさんと話してて降ってきたネタ。
パチュリーさんに続いて咲夜さんもだんだんとフリーダムになってきた気がする

追記:ゆうまさんに絵を描いていただきました。


霖之助 咲夜








「お嬢様って可愛いですよね」


 メイドの言葉に、主は動きを止めた。
 今まさに口に運ぼうとしていたプリンのかけらが、スプーンの上でぷるんと揺れる。

 レミリアはゆっくりとスプーンを皿に戻し、背筋を伸ばした。
 コホンと咳払い。


「何を言っているのかさっぱりわからないわ、咲夜」
「そうですか、失礼しました」


 名残惜しそうにチラチラとプリンを見るレミリアに、咲夜はあくまで澄ました顔。


「どうぞおやつの時間をお続け下さい、お嬢様」
「お茶の時間と言って欲しいわね」


 言いながら、レミリアは紅茶を一口。
 ……こっそりと砂糖を入れ足す。

 あくまでプリンには手を出さないつもりらしい。


「食べないのならお下げしましょうか」
「うー……」


 次の瞬間、食べかけのプリンは咲夜の手の中に現れた。
 みるみるうちにレミリアの目に涙が浮かぶ。


「……冗談ですよ。
 私がそんなことするわけ無いじゃないですか」
「咲夜……あんたねぇ……」







「……そんなことをしてたら怒られてしまいました」
「残念だが、僕に君を擁護することはできかねるね」
「私の忠誠心のどこが不満なんでしょうか」


 首を傾げる咲夜に、霖之助はため息を吐いた。

 このメイドはわりと本気でそう考えてるから怖い。
 むしろ吸血鬼に同情してしまう。


「君は一度忠誠という言葉を辞書で調べた方がいい」
「存在が本みたいな人なら知ってますわ。
 ふたりほど」
「そうか。ぜひ語り合いたいものだね」
「それではまず、鏡を用意しまして……」


 いそいそと準備を始める咲夜に、再びため息。
 天然なところのある彼女は、ツッコミ待ちなのか本気なのかわからなくて困る。


「だいたい、そんなにちょっかいを出すほどのものかね」
「あら、お嬢様の可愛さに異を唱える気ですか?」
「いや、僕が言っているのはそういうことじゃなく……」


 見た目幼いとは言え500歳の吸血鬼だ。
 ……とはいえ。


「……まあ、どっちかというと可愛い……ではあるかな」


 あの吸血鬼は西洋人形のような愛らしさを持っているのも事実だった。
 永遠に幼いとはよく言ったものだ。


「ひどいです……私にはそんなこと言ってくれたこと無いのに……」
「どうしろと言うんだね、一体」


 目頭を押さえ、しくしくと泣き真似をする咲夜。

 最近輪をかけてフリーダムになってきた気がする。
 ……元々だった気もするが。

 まあだからと言って。


「かわいいよ、咲夜」
「へっ? ……え?
 かわ……」


 試しに言ってみると、こうだ。

 言葉を噛みしめるように、浸透していくかのように。
 ゆっくりと顔が赤くなっていく。


「……先に言っておくが、冗談だ」
「そ、そうですよね!
 びっくりしましたよ、もう。
 ……でもちょっと残念です」
「もしくは予行演習かな」


 その言葉は、きっと聞こえなかったのだろう。
 気を取り直したかのように、咲夜は居住まいを正した。


「それで、今日は何を買うんだい?」
「あら、よく買い物だってわかりましたね」
「まあね」


 むしろ道具屋に来るからにはそれが普通なのだが。

 咲夜は立ったまま、香霖堂の中を見渡した。
 席を勧めても座らないときは、咲夜個人としてではなくレミリアのメイドとして来ている時だ。
 つまり買い物である。

 そうでないときは席に座り、わりと自由に物色していく。
 きっと霊夢や魔理沙を参考にしたのだろう。
 ……真似にして欲しくはなかったが。


「ちょっとレシピ本を探しに来たんですよ。
 外の世界の甘いお菓子などを作ってお嬢様の機嫌を取ろうかと」
「うむ。正直でよろしい。
 しかし主のためを思うなら、もう少しオブラートに包むべきだと僕は思うね」
「あら、私と霖之助さんの仲じゃないですか。
 それとも、ここはお客の情報を漏らすような店なのかしら」
「そんなことはあり得ない。
 しかし障子に目有り、というからね。
 ……もっとも、時既に遅い気もするが」


 咲夜は本当にレミリアのことが好きなのだろう。

 そして自分の好きな相手の魅力を、霖之助にも伝えたい。
 ……おそらくそういうことだ。

 きっと彼女なりの愛情表現方法なのだろう。
 方法にいささか問題がある気がするだけで。


「しかし君ほどの人物が真似をするレシピがあるとは思えないがね。
 それに、幻想郷では手に入らない材料も多いと思うんだが」
「たまにはまったく新しい知識を入れておかないと。
 そこから自分なりにアレンジするのが楽しいんじゃないですか。
 近いものをどうやって作ろうか考えるのも楽しみのうちですから」
「なるほど、わかる気はするな……」


 先日読んだ料理漫画に、肉じゃがの由来が描いてあった。
 それにいたく感銘を受けた霖之助は、早速自分でも作ってみたところだ。
 確かにチャレンジ精神は大事なものである。


「とりあえずレシピ本でめぼしいのと言うと……このあたりかな。
 最近はいろいろ種類が増えていてね。
 これはレシピではないが、特集されているな。
 ティラミスやナタデココ……これは材料が手に入らないかもしれない」


 記憶を頼りに、霖之助は本棚から目的のものを抜き出していく。
 並べてみると、結構な量があった。
 それだけ関心があると言うことだろう。


「一通り、見させてもらうわ」
「ああ、ゆっくりしていくといい。
 と言っても、君にはそんなにかからないだろうが」


 時を止められる咲夜にとって、一瞬ですべてに目を通すことなど造作もないことだろう。


「そうですね」


 事実、言っている間にもうあらかた済ませたらしい。
 散らかっていた本が、綺麗に並べられていた。


「いくつか面白そうなのがあったので、少し台所借りてもいいかしら」
「ああ、構わないよ。
 好きにするといい」


 勝手知ったる何とやら。
 霖之助の言葉に、咲夜は店の奥へと入っていく。

 そんな彼女を見送り、霖之助は本を読もうとして……。
 ふと思い出し、声を上げた


「……ちょっと待った。先に片付けてから……」


 慌てて咲夜の後を追う。
 ……追いついたのは、台所。


「ねえ、これって何?
 なんだか面白そうよね」


 ……遅かったらしい。

 パチュリーと共同開発した魔法のコンロ。
 その上に乗せてあった調理器具を手に、咲夜は微笑んでいた。


「見ての通り、ただの鍋だよ」
「ただの鍋はこんなにゴテゴテしてないと思うのだけど」
「外の世界ではそれが普通なんだ」
「そうかしら。
 ちょっと閻魔様でも呼んできていい?」


 咲夜は笑っていた。
 むろん冗談なのだろう。

 しかし、つまりは嘘がばれていると言うことだ。


「……仕方ないな。
 圧力鍋。用途は料理をすることだ。
 これでいいかい?」
「どんな料理が作れるの?」
「さすがに突っ込むね。
 メイドとしての勘かな?」
「どっちかというと、女としての、かしら」


 言っている意味がわからなかったが、この際隠すほどのことでもないだろう。


「僕も最初、使い方はわからなかったんだけどね。
 山の神に教えてもらったのさ」
「やっぱり……」


 ほんのわずかな時間で、煮込み料理もお手の物。
 外の世界の技術に、ここ最近で一番驚愕した覚えがある。

 霖之助の簡単な説明を受け、咲夜は口を開いた。


「霖之助さん」
「ダメだ」


 首を振る。
 が、咲夜はずずいと詰め寄ってきた。


「まだ何も言ってないのに」
「詳しい使い方を知りたいんだろう?」
「そうね、それもあるわ。
 でも鍋は鍋だもの。きっと何とかなると思うの」


 思えば、先ほどの本の中に圧力鍋のレシピもいくつかあった気がする。
 つまり見た瞬間こうなることを予想していたのだろう。

 そして次に出てきた言葉も、予想通りのものだった。


「とういわけでこれ、売ってください」
「残念ながらそれは非売品だよ」
「じゃあ圧力鍋の在庫品でもいいですよ。
 どうせスペアもあるんでしょう?
 霖之助さんがそれくらい用意してないわけ無いですからね」


 すっかりお見通しのようだ。
 ……もっともこれは付き合いの長さから来るもので、どこぞの賢者のように見透かされているわけではない。


「……確かに君の言うとおりだよ。
 どうしてもというなら譲ってあげなくもないがね。
 それには条件がある」


 まあいつぞやのティーカップのように持って行かれても困るので、ひとつテストを出すことにした。


「圧力鍋を使って、料理を作ってみるといい。
 僕のより美味しかったら、売ってあげるよ」
「そうですか。
 では早速」


 ……使い方もわからないのに、と諦めると思っていたのだが。
 目の前のメイドは、楽しげに微笑むのだった。









「お嬢様、霖之助さんとの愛の結晶を作ってきました」
「ぶっ」


 レミリアは思い切り紅茶を吹き出した。
 目の前にいたパチュリーが、素早く魔法で片付ける。

 ……単にノートを広げる場所が欲しかったのだろう。


「間違えました。努力の結晶でした。
 もう何言わせるんですかお嬢様のえっち」
「……ちょっとは私にも文句を言わせなさいよ。
 ていうかパチェ、そんなに食いつかなくても良いわよ。
 どうせいつもののろけ報告なんだから」
「とんでもない。
 せっかくお嬢様のために勉強してきたのに……」


 言いながら、咲夜はてきぱきとお菓子を並べ始めた。
 中央に座るのは、やけに気合いの入った大きさのプリンだ。


「……それで? なにそれ」
「研究熱心な人ほど、ちゃんとメモを残してるんですよね。
 しかもわかりやすく、わかりやすい場所に」
「よくわからないけど……」


 レミリアは興味津々、と言った様子でプリンを見つめていた。


「外の世界で人気の圧力鍋で作ったプリンです。
 ぜひ試食していただきたいと思いまして」
「食べてもいいの? 外の世界で人気で試食なら仕方なく食べてもいいわよね?」
「もちろんですよ、お嬢様」


 言うが早いが、レミリアは既に手を伸ばしていた。
 急いで食べるものだから、口の周りが少し汚れている。


「それでですね」
「うん、おいしいわ」
「便利な調理器具が手に入ったはいいものの、これからちょくちょく研究のため出かけなければならないわけです」


 咲夜はレミリアの口を拭きながら、報告を続けた。

 霖之助のレシピに少し手を加えるだけでぐっと味は良くなったのだ。
 まだまだ改善の余地はあるだろう。

 それに次に行ったときあたり、あの店主に種明かしをしないといけないわけだし。


「今頃落ち込んでないといいですけど」


 なんというか、詰めが甘いのだ、彼は。




 まあ、そんな彼だから、咲夜はきっと。




「さくやは、おたのしみだったようね」
「ええ、楽しんできましたよ。料理対決」


 楽しそうな咲夜を、パチュリーは楽しそうに眺めるのだった。


れみ
泣きれみ

ゆうまさんにカリスマを描いて貰いました。
感謝感謝。

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No title

おかしいな、咲夜さんがメインのハズなのにお嬢様にばかり目がいく・・・
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道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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