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幽霊騒奏曲

空気を読んだ結果のメルラン霖。
銀髪同士映えると思うよ!


霖之助 メルラン







 魔法の森を抜け、再思の道を抜け、行き止まりに無縁塚はある。

 本来交わることのない結界が交わる場所であり、
自分の存在を維持するのが困難なため人間・妖怪問わず危険度の高い場所らしい。


 結界が緩んでいるため冥界とも繋がりやすく、何が起こるかわからない。


 ……と言っても誰もいない場所ではなく、墓地なのでたいてい幽霊が飛んでいる。
 距離を操る死神などもその能力を利用してここまでサボりに来ている。

 この世のものではない人種たちには、自己の概念から違うのかもしれない。


 そして霖之助も、そこに訪れる人物のひとりだった。
 幸い人間と妖怪のハーフたる彼にも、そこまで危険な場所ではない。

 何よりここには、外の道具が流れ着いているのだから。





「……うん?」


 いつものように無縁塚にやってきた霖之助に、耳慣れない音が聞こえてきた。
 楽器、だろうか。

 どうやら先客がいるようだった。


「幽霊……か?」


 音の出所を覗いてみると、幽霊たちが集まっていた。
 中心にいるのは白い少女。彼女が奏者らしい。

 銀の髪と淡い薄紅色の服、同じ色の特徴的な帽子。
 彼女の周りにいくつもの楽器が浮かんでいた。
 煌びやかなトランペットの輝きが、景色の中でよく映えている。

 聴衆たる亡霊や幽霊はそこら中を飛び回り、死んだとは思えないノリの良さだ。
 かくいう霖之助も、なんとも言えない高揚感のようなものを感じていた。


「やーやー、どーもどーも」


 ちょうど彼女のコンサートは一区切り終えたようだ。

 少女は四方の幽霊に手を振り声援……のようなものに応える。
 幽霊たちは居ても立ってもいられないといった様子で、思い思いに散っていった。


「あ、おにーさん。タダ聞きはダメだよー」
「それは知らなかった
 素晴らしい演奏だったから、つい聞き惚れてしまったよ」
「そうー?
 じゃあ、今回は許してあげる。
 なーんて、今日は練習がてらだからー、元々タダなんだけど」


 悩みのなさそうな明るい笑顔だった。
 実際無いのだろう。

 彼女は無意味にくるくると飛び回りながら、霖之助に近づいてくる。


「君は幽霊かい?」
「ううん、ポルターガイストよ。
 でも似たようなものよね。うん」
「騒霊か」


 なるほど、どおりで騒がしいわけだ。


「その騒霊が、幽霊相手にコンサートかい?」
「そうそう。この辺は外の世界の人間の幽霊ばっかだったのよ。
 どこに行けばいいかわからなかったみたいでー。
 結果的に自縛霊になってたみたい」


 そういえば、と思い出した。
 最近、無縁塚にいる幽霊の数が多かった気がする。

 てっきりまた小町がサボっているせいだと思っていたのだが……。


「それで私がちょちょっとね」


 ちょちょっとの意味がわからなかったが、結果は見て取れた。
 あれだけいた幽霊たちが、今は数えるほどしかいなくなっている。

 間違いなく、彼女の音楽のなせるわざだろう。


「おにーさんは人間? 妖怪?」
「どっちだろう。僕はハーフだからね」


 そう言って、まだお互いの名前も知らないことを思い出した。
 咳払いひとつし、自己紹介。


「僕は森近霖之助だ。
 道具屋をやっている」
「へー、あなたがー」


 霖之助の言葉に、なにやら彼女は納得したような表情を浮かべた。
 また魔理沙あたりから変な噂を吹き込まれたのだろうか、と心配になる。


「メルラン・プリズムリバーよ。
 いつもは姉妹で楽団をやってるの。
 結構有名なのよー」


 メルランはくるくるとトランペットを回しながら言った。
 壊さないかと心配になるが、そもそも楽器自体浮いているので落とす心配はないのだろう。


「楽団か。なるほど、それで練習していたわけだね」
「そうよー。これからまた楽器の練習なんだけど。
 練習はタダだから、聞いていってね」
「ああ。作業しながらで良ければね」
「作業……ああ、そうねー」
「何がああなのかわからないが……無縁塚の埋葬は僕の仕事のひとつだからね。
 そろそろ作業を始めさせてもらうよ」
「かまわないわー。
 私のトランペットはもっと遠くまでも届くもの」





 彼女の言葉通り、霖之助の耳には距離を感じさせないほど軽快なメロディが届いていた。
 そして音楽のせいか、いつもより作業がはかどる。
 まるで心が軽くなったように……。


「ねーねーねーねーねー、おにーさん」


 いつの間にか、メルランが側に来ていた。
 練習は終了したらしい。

 そしていつの間にか、結構な時間が経っているようだった。
 作業に没頭してしまってのだろう。


「そこの足下。左足。
 何か埋まってるみたいよ」
「……ここかい?」


 彼女の言葉通り地面を掘り返すと、宝石の付いた指輪のようなものが出てきた。
 手に持ってみると、なかなか価値のあるものらしい。


「そう。さっき埋めて貰った人間の幽霊がね、お礼にって」
「君は幽霊の……言葉がわかるんだな」
「当たり前じゃない、そんなこと」


 死人に口なしという言葉は、幻想郷では常識ではないということか。

 ……最初に霖之助を知っているような素振りだったのは、このせいなのかもしれない。


「ところで、ひとつ気になっていることがあるのだが……」
「なにー?」
「ああ、いや。
 無縁塚の道具について、幽霊は何か言っていたかな」


 その言葉に、メルランはなにやら考え込む。
 思い出しているのだろう。


「ん~? 結構感謝してたみたいよー。
 ……半分くらいは」
「もう半分は、どうなんだい」
「さあどうでしょうー」


 くるくると回る少女。楽しんでいるようだ。
 きっとこれ以上は応えてくれないだろう。

 やがて彼女はふわりと浮かび、霖之助の肩に乗っかってきた。


「おにーさん。道具屋っていったわよね」
「ああ。魔法の森の近くにね」
「うんうん、ちょうどいいわ」


 その言葉に、メルランは満足そうに頷く。


「楽器とか置いてる?
 幽霊憑いてそうな楽器」
「ふむ……あるにはあるが……」


 倉庫に置いてある楽器を脳内に思い浮かべる。
 彼女の言うようなものも何点か持っていたはずだった。


「それ、私に幽霊だけちょうだい」
「いや、僕のコレクションなんだが。
 簡単には譲れないね」
「いいじゃない。道具は使う人のところにあるべきだわ。
 おにーさんが私以上のトランペッターなら……でも。私が貰うのは幽霊だけだからいいわよね。
 もちろん、本体もあったほうがいいけど」
「待て待て、いつの間にあげることが確定してるんだい」


 道具は使う者の元にあってこそ道具たり得る。
 ……それはわかっているのだが、だからと言ってタダで渡すわけにはいかない。
 商売人として。


「そうだな……」


 ふと、肩の上の少女を見上げる。
 先ほどの演奏が耳に蘇ってきた。

 あの演奏がさらに磨きがかかるなら、それも悪くないかもしれない。


「君が奏でる音色を聴いてから、考えるとしようか」

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No title

メルラン霖…………
この発想はなかった、すげぇ

No title

> 幸い人間と霖之助のハーフたる彼にも、そこまで危険な場所ではない。

どんなハーフだよw

No title

ルナサとの絡みも見てみたい。
霖之助はギターとピアノなイメージ、俺の勝手なイメージ。
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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