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鵺の呼び声ぷち 07

ぬえ霖強化週間終了。
と同時にぷちも一応の最終回……のはずだった。

俺たちはまだ登り始めたばかりさ……この果てしないぬえ霖坂を……。
さすがに疲れたので次回更新からは通常運転です。


霖之助 ぬえ








「あらあらあら」


 白蓮は目を丸くしていた。


「まあまあまあ」


 潤んだ瞳、上気した頬。
 感極まったかのように、霖之助の手を取る。


「私……ずっと探してました……。
 あなたこそ……私の……いえ……」


 そんなふたりの様子を、ぬえは遠くで見ていた。


「ぬえ……」


 ナズーリンがぽん、と彼女の肩に手を置く。


「私は天に感謝しなければなりません。
 そう、あなたこそ……」


 寄り添うように一歩踏み出す。
 聖は握った彼の手を、抱きしめるように胸の近くに持って行き……。


「この幻想郷の、人間と妖怪の理想ですね!
 ささ、どうぞこちらへ。お茶でもいかが? あ、コーヒーとかの方がいいかしら」


 年甲斐もなくはしゃぎ始める白蓮に、一同ため息。

 ――こうなることがわかっていたからあまり連れてきたくなかったんだけど。


 ぬえは首を振った。
 近くにあった煎餅を一口。

 普段ぬえが香霖堂にいない時は、だいたいこの命蓮寺にいた。
 最近ではこっちにいることが少ない気もするけれど。

 そしてナズーリンや星ならずぬえまで世話になっている以上、ぜひお礼をしたい……と、
この寺のトップである白蓮から、霖之助をここに連れてくるようずっと言われていた。

 いろいろな理由で先延ばしにしてたのだが、多忙なはずの白蓮が香霖堂まで出向くと言いだしたので、諦めて連れてきたのだ。


 ……やっぱり連れてきたのは間違いだったかもしれない。

 そんなことを考えていると、再びナズーリンに肩を叩かれる。


「ぬえ、君の番だよ」
「あ、ごめん」
「……まるで初孫に会ったおばあちゃんだね」
「そう思う」


 ぬえはあっさりふたりから目を逸らし、輪の中に戻る。
 予想通りの展開だ。予想通りのことにしかならないだろう。

 彼女はナズーリンや星、一輪たちとボードゲームに興じていた。
 ボードゲームやカードゲームの類はルールブックも一緒に落ちていることが多いらしく、使い方がわかることが多い外の道具だ。

 外の道具と言ってもあまり大人数でやるゲームは霖之助が好まないので、
ぬえはいくつか譲ってもらい、寺に持ち帰っていた。


 今やっているのは外国製のボードゲーム……らしい。
 道や城を繋げていき、最終的に点数が高かった者が勝利だ。

 ルールの簡単なゲームなどは、人間の客を交えて行うこともあった。
 違う面子でやると、これがまた盛り上がる。


「ふふん、ほら、ジェノサイドだ」
「ああっ、私の小作人が……」


 星ががっくりと肩を落とす。
 上司にも一切手加減無しというのが彼女らしい。


「じゃあ私はここに……」


 一輪は地味に道を繋げてポイントを稼いでいた。
 実に彼女らしい。


「……ぬえ? 何か言った?」
「ううん何も」


 ぬえは首を振りつつ、お茶に手を伸ばした。

 少し離れたところでは水蜜が人間の相手をしていた。
 その近くでは、雲山が人間の子どもの遊び相手になっている。

 実に平和だ。
 きっとこれからも、この平和が続くのだろう。









「そうですか、魔理沙がそんなことを」
「いいわよそんなにかしこまらないで。
 普段のように話してちょうだい。
 むしろここを自分の家だと思ってもいいのよ」
「最後のは、気持ちだけ受け取っておくよ」


 霖之助は苦笑いを浮かべると、肩を竦めた。

 出された湯飲みを傾ける。
 出入りする人間が多いせいか、さすがいい茶葉を使っているようだ。


「人間が優遇されるべき、か」
「平等だった試しがないそうです。
 虐げられてるとまでは思ってないみたいですが」


 スペルカードルールとはいえ、ここにいる妖怪を全員倒した上でそのセリフ。
 なんとも魔理沙らしい。


「……あの子は努力家だからね」


 対等でありたいと思うなら。
 同じ場所にいたいと願うなら、進み続けるしかない。
 誰かの言葉を思い出した。

 魔理沙が今の力を身につけるまでどれだけ努力を重ねたのだろう。
 本人はそれをわかっているから、もっと優遇されるべき、と言ったのだ。

 ……きっと、他の人間には無理だから。


「そうですね」


 白蓮もわかっているのか、頷いただけでそれ以上は何も言わない。

 沈黙が落ちる。
 だからといって居心地が悪いわけではない。

 離れたところから聞こえる笑い声が、ここが安全な場所だと物語っていた。


「……人間と妖怪は、これからどうなると思いますか?」
「平等や対等になるのは……難しいだろうね。
 それに人間も妖怪も、お互いの本分を忘れるべきではないと思う」


 霖之助の言葉に、白蓮の気落ちする気配がした。
 しかし、と霖之助は言葉を続ける。


「仲良くなるのは、難しくないんじゃないかな」
「……そう……ですよね」


 白蓮が顔を上げ、寺の様子を見渡す。

 この寺には人間と妖怪が共存していた。
 お参りに来た人間の大人もいれば、単に遊びに来ただけの人間の子どももいる。
 妖怪のいるこの寺に、だ。

 これも信仰のなせる業だろうか。
 それとも――。


「人は急には変わらないけどね。
 今の子どもたちが大人になって、また子どもを産んだら……」


 人間の里が無くなる日が来るのかもしれない。
 妖怪が隣にいるのが当たり前の集落。

 そうしたらなんと呼べばいいのだろうか……と考え、霖之助は首を振った。
 まだ時期尚早に過ぎる。


「ですよね」


 再び白蓮は頷いた、

 焦ることはない。
 ずっと見守っていけばいいだけなのだから。


「じゃあ、手始めに。
 あなたから仲良くするとしましょうか」
「うん?」


 なにやら怪しくなってきた雲行きに、霖之助は首を傾げる。
 どうしてそうなるのだろうか。


「だってあなた、人間と妖怪のハーフなんでしょう?」
「それはそうだが……」
「ならより私たちに近い存在。
 つまりあなたから仲良くしていけば、いつかは人間とも仲良くなれます!」
「いやそれはどうだろう」


 首を振る、が聞く気配がない。


「どうかしら、うちの娘たち。
 ナズーリンもいい娘よ。いろいろ拾ってくるし、行動力もあるわ。
 一輪なんて真面目で要領も良くて、縁の下の力持ちだし……」


 打って変わって、白蓮の目が輝きだした。

 その様子を見ていた人間たちは、こぞってこう漏らしたという。
 まるで見合いを勧める近所のおばちゃんのようだ、と。


「水蜜は船長さんで頼れる子だし。
 星は……ちょっとうっかりなところもあるけど、そこが可愛いわよね」
「気持ちは嬉しいんだが……」
「霖之助ー、みんなからお土産貰ったよ。
 帰って食べよう」


 白蓮の視線を避けていると、ぬえが顔を出した。

 彼女を見て……霖之助は立ち上がる。


「ああ、ぬえ……いいところに。
 そうだね、すまないが白蓮」


 ぬえの頭をぽんぽんと撫でる霖之助。
 嬉しそうにぬえの羽根が震える。

 その様子を微笑ましく見つつ……正直な気持ちで、霖之助は白蓮の言葉に答えることにした。


「間に合ってるよ」

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なんか心が暖まるわぁ…。
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