リレーSS
リレーSSなるものに参加してみました。
といってもオチを書いたくらいですけども。
霖之助 朱鷺子 慧音 ナズーリン
蒼い快晴の空に広がる、白く巨大な入道雲。
地上の民を照らすは、陰りを知らぬ灼熱の巨星。
季節は、夏。
幻想郷を隅々まで満たす暑気は、時折吹き抜ける風に煽られながら、ゆったりと魔法の森にも押し寄せる。
その入り口に佇む古道具屋にも、それは例外無く訪れていた。
窓際に吊るされた風鈴が、涼やかな音色を立てながら風に舞っている。
それを気だるげに見つめるのは、朱鷺に例えられる一人の少女。
「……あつい……」
「…………」
傍らの青年は、ぱらり、ぱらりと音を立てながらページを捲る。
「……ねぇ……あついよぉ……りんのすけぇ……」
そう言って彼女は、汗でぴったりと張り付いた僕の服に纏わりつく。
「……あ~つ~い~!!」
「……頼むから、背中で暴れないでくれ。余計暑くなる……」
「暑いんだったら何かしてよぅ!! このままじゃ溶けちゃいそうだよ……」
そういう彼女は、先程から氷菓子を漁っていたのだが、それでもこの暑さには参るらしい。
……この様子だと、そろそろアレを作るべきかもしれない。
正直、ここのところの猛暑には自分でも参っていた所だ。
僕自身も最近食欲が落ちているし、これも丁度良い機会か。
「なあ、朱鷺子」
「なあに? 何かあるの?」
「折角だから、今日の夜は柳川鍋にしようか」
「やながわ……なにそれ?」
「夏場に人間が食べる料理さ。泥鰌と牛蒡を卵で閉じて……」
「ドジョウ!? 食べたい食べたい食べたい!!」
泥鰌と聞いた途端に目が輝きだした。
そういえば、朱鷺の主食の一つは確か泥鰌だったか。
「好物なのかい?」
「うん、すっごく大好き!!」
この様子なら、喜んで食べてくれそうだ。
「それなら、新鮮な泥鰌を用意しないとな……」
「わたし、いい場所知ってるよ!! 美味しいのが沢山取れるところ!!」
それならば渡りに船だ。
彼女に必要な籠などを渡して、獲って来てもらうとしよう。
「頼めるかな? 朱鷺子。僕はその間に、他の食材を揃えに行って来るよ」
「わかった!! 待っててね、いっぱい獲ってくるから!!」
「ああ、楽しみにしてるよ」
言葉を交わして、彼女は飛び立っていった。
僕の方も、早速準備に取り掛かるとしよう。
(ここまでjardioさん)
「牛蒡に椎茸、三つ葉に山椒、そして卵、と。ふむ、大体こんなところか」
人で溢れる一本道。聞こえる威勢のいい声。所狭しと広げ、並べられた露店。
朱鷺子と約束を交わしてから数刻、僕は鍋の材料を調達するために人里の市場に来ていた。
柳川鍋に使う食材は、泥鰌と野菜と卵。
もともとは外の世界の人間が食べるものだが、これくらいの物ならば里の市、
此処へ来れば簡単に集まるのだ。
そして一通りの材料が揃い、後は帰って準備をするだけ……なのだが、
「……買いすぎてしまったな」
ぎっしりと、持参した籠に入っている野菜と卵。
僕と朱鷺子の分を考えても、それ以上の量を買ってしまった。
いくら頑張っても余ってしまうほどの量だ。
久しぶりの柳川鍋。正直なところ、自分も楽しみにしているみたいである。
適量を調理して食べるにしても、何日も同じものが続くと僕も朱鷺子もさすがに嫌だろう。
さてどうしたものかと思っていると、僕の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ん? そこに居るのは霖之助じゃないか?」
僕が振り向くと、そこには幼馴染の上白沢 慧音が立っていた。
「やぁ慧音、今日は里のパトロールかい?」
「あぁそうだな。しかし珍しいな、お前が里に下りて来ているなんて」
「珍しい? こっちは結構来ているつもりなんだが……」
僕が答えると、慧音は「はぁ」と小さくため息を吐いた。
「……1月に2、3度は珍しいだろうに。それで、霖之助は今日はどうしたんだ?」
「あぁ、僕はこれさ」
僕は手に持っていた籠を持ち上げ、慧音に見せた。
そして中を見た彼女が……首を傾げる。まぁこれだけでは無理も無いだろう。
「牛蒡、椎茸、三つ葉、山椒と卵……料理だとは誰が見ても分かるが、一体何を作るんだ?」
「あとはこれに泥鰌が入れば出来上がりさ。慧音も何度か食べた事があると思うよ」
「あぁなるほど、柳川鍋か。でもこれはちょっと、いやかなり量が多い気がするが……」
「……ご覧の通り買いすぎてしまったんだよ」
慧音がピンポイントで後悔していたことを突いてくる。さすがは幼馴染といったところか。
再び、この量をどうしようかと思ったとき、目の前の慧音を見て僕の頭に1つの案が浮かんだ。
「そうだ、良かったら慧音。君も一緒にどうだい?」
「えっ!?」
僕が聞くと、慧音はビクッと上に乗っている帽子が落ちそうなほど驚いた。
慌てて慧音が帽子を手で押さえる。
「いや、そこまで驚かなくてもいいだろう?」
「いや、すまない。急に言われたからつい、な」
慧音が帽子の位置を整えながら言う。そんなに僕の誘いは意外なのだろうか。
「それで霖之助、その、鍋は霖之助のところでやるんだよな?」
「もちろん香霖堂さ。もしかして、予定が合わなかったかい?」
予定が合わないなら無理に誘う必要も無い。もともとは何日か食べ続ければ無くなる量だからだ。
……まぁ、その何日かが大変なのだが。
「いや、大丈夫だ。全然大丈夫だ。む、むしろいつでもどんと来いなくらいだっ」
僕の言葉を聞いた慧音がぶんぶんと手を振り否定する。……顔が紅いのはよく分からない。
とにかく大丈夫ならば、彼女にも参加してもらうとしよう。
「それは良かったよ。僕らじゃ今日だけでは食べきれないからね」
「……僕ら?」
急にピタッと止まった慧音が聞いてくる。……そういえば伝えていなかったか。
「今日の鍋のメインの泥鰌は朱鷺子が獲ってきてくれるらしい。
だから朱鷺子も一緒に食べることになっているんだよ」
「そ、そうか……なんだ……二人きりじゃないのか」
僕が伝えると慧音は急にガッカリとした感じになってしまった。
二人でなければいけない問題でもあったのだろうか。
「慧音? 何か不都合でもあったかい?」
「あ、その、そういうことじゃないんだ。ともかく相伴にあずかるとしよう。
すぐに準備をするから、今から付いて行っても大丈夫か?」
「構わないよ。ふむ、じゃあ僕は何処で待つべきか……」
この市場に居てもいいかもしれないが、人が多いので一度別れたらなかなか見つけにくいだろう。
かといって里に詳しいわけでは無いので、他の待ち合わせ場所もすぐには思いつくはずも無い。
僕がそう伝えると、慧音が案を出してくれた。
「それなら寺子屋で待っててくれないか? ここと私の家からも近いし、ちょうどいいだろう?」
「寺子屋、か」
あそこならそこまで時間も掛からないだろうし、久々に行くにはいい機会かもしれない。
「そうだね、そうさせてもらうよ」
「わかった。それではまた後で、寺子屋でな」
「あぁ」
そう言い、慧音は小走りで自分の家の方へと向かっていった。昔と変わらず考えたら一直線である。
「……さてと、僕も向かうとしよう」
買いすぎた材料を持ち直す。ズシリと重みが来るが、なんとも無いと自分の体に言い聞かせる。
日はまだ高い。少し時間が掛かっても夕餉の時間までに遅れる事はないだろう。
そう思いながら、僕もまた、さすがに小走りではないが目的地へと向かうことにした。
(……そういえば、朱鷺子は泥鰌を手に入れたのだろうか?)
(ここまでこたびさん)
飽きること無く照り続ける夏の太陽に、
私は手を伸ばして、そしてその眩しさに目を眩ませる。
水田と、そこに水を運ぶ為に設けられた用水路の間で、
私は飽くこと無く空を見上げていた。
家の中でただ太陽の暑さだけを感じていた時よりも、
こうして外で快晴の空を見上げていた方がいくらか気分は良い。
澄み渡った青いキャンバスに輪郭と陰影のハッキリとした雲が、
風の向くまま気の向くまま流されて行くのを見るのは、
夏の暑い日の中で数少ない私の楽しみの一つと言っていい。
だが何時までもこうして夏の空に想いを馳せている訳にもいかない。
私はこの場所に空を見る為に来た訳ではない、
勿論水田の様子を見に来た訳でもない。
確かにこの時期の水田は伸び始めた稲にとって大切な時期だ。
虫が付いたり、水が足りなくなったりすれば大変な事になる。
だがそれは今の、いや今で無くとも私の心配する事ではない。
水田の管理は農家に任せておけばいい。
私の目下の目標。
それはこの用水路で泥鰌を捕まえる事だ。
それもたくさん。
泥鰌さえ捕まえてくれば、霖之助が「やながわなべ」と言う泥鰌料理をご馳走してくれるらしい。
泥鰌は大好きだけれど、私は泥鰌を料理して食べた事がない。
と言うより余り料理をしない。
山では食材はそのまま落ちているものだし、
魚も生で食べるか、気分次第で塩焼きにするぐらいしか私は調理というものを知らない。
でも最近は違う。
香霖堂へ行けば霖之助が料理をご馳走してくれるし、
あの店には面白い本や道具がたくさんある。
霖之助は少し愛想が良くないけど、悪い人妖ではない。
多分自分の感情を他人に伝えるのと、他人の優しさを感じるのが少し下手なだけだろう。
そんな霖之助と一緒に居ると、私は楽しい。
明日はまた今日と違う事を教えてくれる。
彼は私の明日を昨日よりもっともっと楽しくしてくれる存在なのだ。
私は籠の近くに置いた網を手に持つと、そのまま用水路へそっと入れた。
余り激しく入水させると泥鰌が逃げてしまう。
そうして細心の注意を払いながら、私は柔らかく敷き詰められた泥の底を突っつく。
そして手応えと共に網を引き上げた。
畦に引き上げた網の中身を見ると、思ったとおり大量の泥鰌が、
泥まみれの体をヌルヌルと動かして、のた打ち回っていた。
私は思わずこぼれた笑を隠そうともせず、
網の中の泥鰌を籠の中へと入れた。
体に付着している泥は後で洗い流せばいい。
下手に今洗い流そうとすれば、この活きの良い泥鰌達は、
たちまち私の元から逃げてしまうだろう。
こうして捕まえた泥鰌を籠に入れて、また私は同じ様に網で泥の底を突付く。
次々と増える籠の中の泥鰌が面白くて、ついつい場所を変えて何度も行ってしまった。
「う、うわぁ、うじゃうじゃ……」
そんな事を繰り返すことおよそ半刻。
持ってきた籠の中はとても酷い事になってしまった。
泥鰌と泥鰌が絡みあいヌメリあい、ものの見事におぞましい光景を織り成している。
少し捕り過ぎたかもしれない。
いくら泥鰌が好物だと言っても二人でこんなに食べるのは難しいかもしれない。
いや、でも一度泥鰌を嫌という程食べてみたい気もするし……
でもでもそんな事を言って食べ残したら、せっかく頂いた命が勿体ないし……
でもでもでも逃がすのも……
頭の中で思考が始まり、終着点を見つけられずに始点に戻り、
また終点を探す為に出発して行く。
こんな状況を何と言うのだったか……
あぁ、そうだ、堂々巡りだ。
この前霖之助が教えてくれた。
うんうん、と私は頭を上下に振って納得する。
いや待て、目の前の状況への解決にはなっていないような気がする。
「やぁ、何か捕れるのかい?」
「ぐぁ!?」
腕を組んでぐぬぬと頭を捻っていた私に、
突然背後から声が投げかけられた。
突然の不意打ちに私は声を上げて驚いてしまった。
「あぁ、すまない。驚かせてしまったみたいだね」
「う、ううん。別に驚いてないしいいよ」
「……まぁ、君がそう言うのなら」
声のした方向へ振り向いて、私は同じ様に言葉を返す。
私に声を掛けたのは小さな体躯をした女の子で、
髪も、服も全部灰色をしていた。
丸い耳と細長い尻尾から、彼女がネズミの妖怪だと言う事はすぐに分かった。
そして手にはL字型の長くて大きい一対の棒を持っている。
何に使うのだろう、武器か何かだろうか。
「それで、何か捕れるのかい?」
「あーっと、えっと、うん。捕れるって言うよりは捕った後なの」
私は近くにある籠に指を差して答える。
女の子は籠の中を覗き込むと「うわぁ」と声を出して、苦そうな表情した。
泥鰌が苦手なのか、それとも泥鰌が大量にひしめき合っているのが苦手なのか。
どちらにせよ、この両方の状況を好ましく感じる女の子は少ないと思う。
そう考えると私は女の子だけど泥鰌が好きだから、少し変わっているのかな?
好きは好きでも、食べ物的な意味でだけど。
「凄いな……その、うん」
「そうなのよ、少し捕り過ぎちゃって。
こんなに食べきれなさそうだから、このまま逃がそうかどうか悩んでいたの。
あ、そうだ! アナタに少し分けてあげようか?」
「え、遠慮しておくよ。
その、私の住んでいる場所はお寺だから動物を食べてはいけないんだ……ははは」
引きつった笑いでネズミの女の子が言った。
女の子なのに変わった喋り方をする娘だ。
何だか霖之助によく似ている。
「あ、そう言えばまだ私の名前を言っていなかったわね」
「あぁ、そう言えばそうだ。すまない突然声を掛けておいて名乗りもせずに」
「ううん、お互い様だよ。じゃあまずは私から。
私は朱鷺子。本当は私の本名じゃ無いのだけれど、
みんながそう呼ぶからアナタもそう呼んでくれると嬉しいな」
「どうも。じゃあ次は私だ。
私はナズーリン。普段はダウザーをしている」
「ダウザー?」
「ダウザーと言うのはね、この二本のダウジングロッドを使って、
地下水や鉱脈を見つけたりする人の事を言うのさ」
そう言ってナズーリンは先程私が興味を惹かれた、
二本の棒「ダウジングロッド」を私の前に差し出して言った。
「へぇーそんな技術が有るんだ。今度霖之助に聞いてみよう」
「っむ、霖之助だって……あの店主の事か」
籠いっぱいの泥鰌を見た時と同じ様に、ナズーリンが顔をしかめた。
まるで口の中にセロリやパセリ、ピーマンと言った苦い野菜の代表を入れたみたいな表情だ。
「いや、少しね。あの店主の事だからきっと素直には教えてくれなさそうだよ?」
「そんな事ないよ。きっと霖之助なら優しく教えてくれるもん」
「どうかなぁ……まぁ、あの店主がそう言う趣味なら別だけど」
「そう言う趣味?」
「童女趣味さ」
「うーん、もしそうだったとしたらアナタもその範囲だと思うのだけれど」
勝ち誇ったように胸をはるナズーリンに私はこう言い返した。
彼女と私の身長は見たところそんなに変わらないようだし、
いや少し私の目線の方が高いから。私の方が身長は高そうだ。
「な! なんだとぅ! 言っておくけど私はこう見えて千年以上は……」
「とにかく、霖之助はそこまで酷い人でもないよ?
確かに愛想はあんまり良くないけど、物知りだし、
それに本当に根っこの部分では優しいよ」
「どうだか」
「むー何で分かってくれないかなぁー」
私にはナズーリンと霖之助の間に何があったかは知らない。
きっと余りよろしくない事があったのだろう。
見たところナズーリンはそんなに悪い妖怪でもなさそうだろうし、
霖之助もそうだ。
そんな二人がお互い(霖之助はどう思っているか知らないけど)啀み合っているのは、
何だか見ていて余り気持ちが良くない。
何か私に出来る事があればいいのだけれど……
私に出来る事……
「あ!」
「どうしたんだい? 急に大声なんか出して」
「ねぇねぇ! ナズーリンも泥鰌を食べにおいでよ」
「は!? どうしていきなりそうなるんだ!
大体私の住んでいる場所はお寺だから動物はダメって……」
「住んでいるところじゃなきゃいいんじゃない!
一緒に香霖堂へ行こうよ!」
私は急いで網と泥鰌で一杯の籠を持つと、ナズーリンの手を引いて歩き出した。
「ちょっと! 止めるんだ! 別に私は!」
「いいから! みんなで食べたらきっと美味しいし、誤解も解けるよ」
「だーかーら! 私は誤解なんか! うわ! 泥が飛んできたペッペ!」
元々二人で食べきれるかどうかも不安だったんだ、
今更一人や二人増えたところでどうって事無いだろう。
私はナズーリンの手を引きながら、空へと飛び上がった。
相変わらず元気な太陽が私達を含めた地上の全てを見つめている。
ただ呆然と過ごすだけなら、夏は長くてとても退屈だ。
けれどもその夏を精一杯過ごすとなると、今度は短すぎる。
そして、その夏はとても楽しいものになる。
(ここまで十四郎さん)
寺子屋で待つこと約三十分。駆け足でやってきた慧音の様子は先程と比べると明らかに変わっていた。
口紅でほのかに朱色になった口元。
少し白くなった顔。
なにより今まで霖之助でも見た事のないようなフリルの入ったワンピースのような服を着ていた。
「……心なしか変わってないか?」
「…………」
――そして霖之助の第一声に絶句するしかない慧音。
「はぁ……まぁお前のそういう部分は嫌いじゃないが……外見とお洒落は違うからな?」
「? ――よく分からないがとりあえず準備が出来たなら行こうか。もうすぐ朱鷺子も帰ってくる頃だろうしね」
「そうだな。あの辺りは夕方でも妖怪とか結構出るがまだ時間はあるし大丈夫だから話ながらゆっくり歩くとしよう」
そこからさらに三十分後――。
「あぁ~……やっぱりさっきの台詞フラグだと思ってたんだよ……」
「すまないな、霖之助ェ……」
「謝る気ゼロだろ」
霖之助の背負った荷物を狙った妖精・毛玉・低級妖怪達が二人を囲んでいた。
「このぐらいの数なら私一人でもなんとかなるが……お前を守りながらだとなる……と?」
霖之助を庇うように臨戦体勢をとる慧音の目の前で、五匹並んでいた毛玉の姿が一瞬で消えた。
何がなんだか分からないが、とにかく霖之助の安否を確認するために後ろを振り向くと
拳銃を持った霖之助が毛玉がいた場所に銃口を向けていた。
「護身用の退魔銃と護符だ。足は引っ張らないから君は好きなだけ暴れてくれ」
「そうか。護符があるなら遠慮する必要はないな。
時間もおしている……久しぶりに本気でいかせてもらおう!!」
一方、二人が大乱闘を繰り広げている間、香霖堂ではナズーリンと朱鷺子が着々と鍋の準備を進めていた。
「遅いなぁ~、もうほとんど終わったのにぃ」
「君の気が早すぎるんだよ。まだ日没にもなってないのに……」
夕日を見ながらナズーリンがぼやくが朱鷺子は特に嫌な様子を見せていない。なぜなら……
「自分の方がノリノリだったじゃん……」
「何か言ったかい?」
「なんにも……って、あっ!やっときた!!」
朱鷺子が遠くの方を指差し、それにつられるようにナズーリンもそちらの方を向く。
「あれぇ~~? なんか慧音がいる?」
「あ゛ぁ~疲れた……。僕にあれだけの運動はキツいって……」
「全くだ。まさかあのタイミングで来るとは思わなかったしな」
霖之助と慧音がやってくるのをみて、朱鷺子は彼に駆け寄った。
「(ねぇ……材料多くない? ついでに人数も増えてない?」
朱鷺子が霖之助に向かって駆け寄ると彼にだけ聴こえる声で言った。
「(ああ、市場で偶然会ってね。……って、そっちも増えてるじゃないか)」
「ちょっと! 二人共なにヒソヒソ話してるのか知らないけど早く始めましょう!!」
「分かった。分かったから腕引っ張らないでくれ……! 身体中が悲鳴上げてるんだから」
こうして、騒がしい柳川鍋パーティーが始まった――。
(ここまでイッシーさん)
「そういえば、霖之助に言われるまま準備したんだが」
鍋を火にかけ、皿を配り終え。
すっかり食事の準備が整った頃、慧音がふと疑問を発した。
僕から見て左側に朱鷺子が座り、右側に慧音、正面にナズーリンが腰掛けている。
「朱鷺子は卵を食べられるのか?」
「うん、食べるよ? なんで?」
「いや……」
あっさりと応えられ、慧音は少し驚いた表情を浮かべる。
そう言えば、地底の烏も温泉卵が好物だと聞いたことがあるが……。
無精卵ならいいのだろうか。
もしくは、別種族なら……?
気になるところだが、考えてもわからないので諦めることにした。
あまり深く考えることでもないのかもしれない。
「そう言えば、泥鰌を使った鍋と言えば地獄鍋もあったね」
「地獄鍋?」
「ああ」
火にかけられている鍋が、クツクツと音を立てる。
鍋の下には外の世界の便利な道具、カセットコンロ。
先日早苗から使い方を教えてもらって以来、活用している道具だ。
魔法の火炉でも似たようなことはできるのだが、こちらのほうが楽でいい。
「鍋に水と生きたままの泥鰌を入れて火にかけるんだ。
煮立ってきたところに豆腐を入れると、泥鰌が冷たい豆腐に逃げ入ろうとして、
そのまま豆腐と一緒に煮え上がるって料理でね」
確か落語の題材にもなっていた気がする。
「周りからは湯豆腐を食べているようにしか見えないため、
肉食ができなかった僧侶が好んで食べていたらしいんだが」
そう言って僕は、正面に座る少女に目を向けた。
「ナズーリンは大丈夫なのかい?」
「ああ、もちろんうちの寺は肉食を禁止しているよ。
……建前上はね」
ナズーリンは肩を竦め、彼女独特の表情で笑う。
「そんな制約は修行をしている人間が守ればいいだけさ。
ただの鼠にはまったく関係ない話だね」
彼女は言いながら、鍋に視線を移す。
なんだかんだで楽しみにしているようだ。
そんなナズーリンを、朱鷺子は楽しそうに見ていた。
「ああもちろんご主人様たちにも持って帰るつもりではいるよ。
土産話を、たっぷりと」
「……朱鷺子、友達は選んだほうがいいよ」
「えー、ナズーリン、面白いのに。
ちょっと霖之助に似てるし」
「ちょっと待ってくれ。
いつの間に君の中でそんな位置付けになってるんだい」
ナズーリンは慌てて立ち上がりかけ……僕をキッと睨みつけてきた。
「そうか、君の入れ知恵だな。
卑怯だぞ、霖之助君」
「なにを言うんだね。
今のやりとりだと、むしろ被害者は僕だろうに。
……朱鷺子に変なこと吹き込まないでくれよ」
「そんなことはしない。
まあ、せいぜい霖之助君が童女趣味じゃないかと話したくらいかな」
「なんだと」
鍋を挟んでナズーリンと口論。
そんな僕らの姿を見ながら、朱鷺子は笑っていた。
「心配してたけど、仲いいね」
「まさか」
「心外だな」
同じタイミングで、同じ反応。
……ちょっと気まずい。
それはナズーリンも同じだったらしい。
「わかったかい? あれが喧嘩するほど仲がいいというやつだよ」
「うん」
慧音は微妙に苦い笑いを浮かべながら、朱鷺子に説明していた。
……その意見には異を唱えたいところだが。
「慧音も霖之助と喧嘩するの?」
「…………」
朱鷺子の問いに、慧音は助けを求めるようにこちらを見てくる。
……そんな目で見られても、困る。
「ハハッ、おかしなことを言うからだよ、慧音君」
「う……」
ナズーリンの言葉に、絶句する慧音。
そのやりとりに、ふと疑問が浮かんだ。
「慧音はナズーリンと知り合いだったのかい?」
「ああ、寺を建てる時に挨拶にな」
そういえば、ナズーリンの寺にはよく人間が訪れているらしい。
なるほど、最初から慧音を味方に付けるほうが得策、ということだろうか。
「地盤固めは信仰の基本だよ」
……ぜひその言葉を霊夢に聞かせてやって欲しいものだ。
「さて、そろそろ煮えた頃かな」
タイミングを見計らって蓋を開け、慧音が火の通りを確認していく。
朱鷺子たちが泥を抜いていてくれたおかげで、泥鰌は開かずそのまま入れていた。
見た目はアレだが、味はいいはずだ。
「わぁ、おいしそう」
いい感じに煮えた鍋に、朱鷺子が歓声を上げる。
「じゃあナズーリン、器を貸してくれ」
慧音は手際よく三つ葉を散らし、完成。
まずは客の器から盛っていく。
「ほら、霖之助」
「ああ」
彼女に言われ、霖之助も器を差し出した。
……これは確かに、スタミナがつきそうだ。
食べなくても平気な体質と言っても、食べるのは楽しみのひとつである。
夏バテなんかは予防するに越したことはない。
「はい、朱鷺子」
「……ゴボウがたくさん」
「ちゃんと好き嫌いせず食べるんだぞ」
慧音は笑顔でそう言うと、最後に自分の皿によそった。
全員に行き渡ったところで、朱鷺子が手を合わせる。
「いただきます」
そう言うや否や、素早く箸を手に取った。
そして泥鰌を掴み、そのまま口へ。
「あちち」
「ほら、慌てるからだ。
ああもう、こんな所にも付いてるぞ」
「逃げないから、落ち着いて食べるといい」
そんなやりとりに苦笑しつつ、僕も箸を進める。
……なるほど、美味い。
「泥鰌はまだまだあるよ。
朱鷺子君が取ってきたやつがね」
「……しかし、多すぎやしないか」
「うん。頑張ったよ」
輝かんばかりの笑顔を浮かべる朱鷺子を、僕はゆっくりと撫でる。
見ているほうが楽しくなるような、そんな笑み。
「しかしこんなにあるなら別の料理も作ればよかったな。
この前ミスティアに上手な蒲焼きのやり方を聞いてきたんだが……」
「なんだと」
瞬間、慧音が怖い目で睨んでくる。
……なにがそんなに逆鱗に触れたというのか。
「あ、私もいたよ、その時」
「なんだと」
なんだと、のニュアンスが若干違う気がした。
なにが違うのかは、わからなかったが。
「霖之助、こんな子供を夜の店に連れ出したというのか」
「いいじゃないか。
それにその言い方は誤解を招くよ」
「えー、ミスティアは友達だからいいじゃない」
「しかしだな……」
苦い顔を浮かべる慧音に、ナズーリンが口を挟んだ。
「そうならないように、しっかりと見ててやればいいじゃないか」
「……うむ、まあな」
「それが親の役目というやつだよ」
満足げに頷くナズーリン。
そしてすぐさま鍋に戻る。
……ん?
「ナズーリン、何か勘違いしていないか?」
「ああ、言わなくてもわかっている。
君たちの関係のことだろう?」
早々と2杯目のおかわりに手を伸ばしながら、ナズーリンは答えた。
説明した覚えがないため不安だったが、一応わかっているらしい。
「最初は本当の親子かと思ったんだがね。
よく考えたら違うとわかった。
つまりはまあ、親子みたいなものなんだろう?」
そう言って僕と慧音、それから朱鷺子の髪を見比べる。
親子、か。
この銀髪のせいだろうか。
「だがいい土産話ができたよ。
聖が聞いたら喜びそうだ」
「……土産話?」
「ああ。
こんな所に聖の理想が体現されてたとはね」
なんだか雲行きが怪しくなってきた気がする。
そんな僕の心情を無視して、彼女は言葉を続けた。
「半人半妖と半人半獣の夫婦に、妖怪の養子だろう?
きっと泣いて喜ぶと思うよ。いやあ目に浮かぶね」
よかったよかったとばかりに頷くナズーリン。
「……まずはどこから説明したものかね」
激しく咳き込む慧音を隣に、僕はこの事態をどうやって収拾しようか頭を悩ませるのだった。
といってもオチを書いたくらいですけども。
霖之助 朱鷺子 慧音 ナズーリン
蒼い快晴の空に広がる、白く巨大な入道雲。
地上の民を照らすは、陰りを知らぬ灼熱の巨星。
季節は、夏。
幻想郷を隅々まで満たす暑気は、時折吹き抜ける風に煽られながら、ゆったりと魔法の森にも押し寄せる。
その入り口に佇む古道具屋にも、それは例外無く訪れていた。
窓際に吊るされた風鈴が、涼やかな音色を立てながら風に舞っている。
それを気だるげに見つめるのは、朱鷺に例えられる一人の少女。
「……あつい……」
「…………」
傍らの青年は、ぱらり、ぱらりと音を立てながらページを捲る。
「……ねぇ……あついよぉ……りんのすけぇ……」
そう言って彼女は、汗でぴったりと張り付いた僕の服に纏わりつく。
「……あ~つ~い~!!」
「……頼むから、背中で暴れないでくれ。余計暑くなる……」
「暑いんだったら何かしてよぅ!! このままじゃ溶けちゃいそうだよ……」
そういう彼女は、先程から氷菓子を漁っていたのだが、それでもこの暑さには参るらしい。
……この様子だと、そろそろアレを作るべきかもしれない。
正直、ここのところの猛暑には自分でも参っていた所だ。
僕自身も最近食欲が落ちているし、これも丁度良い機会か。
「なあ、朱鷺子」
「なあに? 何かあるの?」
「折角だから、今日の夜は柳川鍋にしようか」
「やながわ……なにそれ?」
「夏場に人間が食べる料理さ。泥鰌と牛蒡を卵で閉じて……」
「ドジョウ!? 食べたい食べたい食べたい!!」
泥鰌と聞いた途端に目が輝きだした。
そういえば、朱鷺の主食の一つは確か泥鰌だったか。
「好物なのかい?」
「うん、すっごく大好き!!」
この様子なら、喜んで食べてくれそうだ。
「それなら、新鮮な泥鰌を用意しないとな……」
「わたし、いい場所知ってるよ!! 美味しいのが沢山取れるところ!!」
それならば渡りに船だ。
彼女に必要な籠などを渡して、獲って来てもらうとしよう。
「頼めるかな? 朱鷺子。僕はその間に、他の食材を揃えに行って来るよ」
「わかった!! 待っててね、いっぱい獲ってくるから!!」
「ああ、楽しみにしてるよ」
言葉を交わして、彼女は飛び立っていった。
僕の方も、早速準備に取り掛かるとしよう。
(ここまでjardioさん)
「牛蒡に椎茸、三つ葉に山椒、そして卵、と。ふむ、大体こんなところか」
人で溢れる一本道。聞こえる威勢のいい声。所狭しと広げ、並べられた露店。
朱鷺子と約束を交わしてから数刻、僕は鍋の材料を調達するために人里の市場に来ていた。
柳川鍋に使う食材は、泥鰌と野菜と卵。
もともとは外の世界の人間が食べるものだが、これくらいの物ならば里の市、
此処へ来れば簡単に集まるのだ。
そして一通りの材料が揃い、後は帰って準備をするだけ……なのだが、
「……買いすぎてしまったな」
ぎっしりと、持参した籠に入っている野菜と卵。
僕と朱鷺子の分を考えても、それ以上の量を買ってしまった。
いくら頑張っても余ってしまうほどの量だ。
久しぶりの柳川鍋。正直なところ、自分も楽しみにしているみたいである。
適量を調理して食べるにしても、何日も同じものが続くと僕も朱鷺子もさすがに嫌だろう。
さてどうしたものかと思っていると、僕の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ん? そこに居るのは霖之助じゃないか?」
僕が振り向くと、そこには幼馴染の上白沢 慧音が立っていた。
「やぁ慧音、今日は里のパトロールかい?」
「あぁそうだな。しかし珍しいな、お前が里に下りて来ているなんて」
「珍しい? こっちは結構来ているつもりなんだが……」
僕が答えると、慧音は「はぁ」と小さくため息を吐いた。
「……1月に2、3度は珍しいだろうに。それで、霖之助は今日はどうしたんだ?」
「あぁ、僕はこれさ」
僕は手に持っていた籠を持ち上げ、慧音に見せた。
そして中を見た彼女が……首を傾げる。まぁこれだけでは無理も無いだろう。
「牛蒡、椎茸、三つ葉、山椒と卵……料理だとは誰が見ても分かるが、一体何を作るんだ?」
「あとはこれに泥鰌が入れば出来上がりさ。慧音も何度か食べた事があると思うよ」
「あぁなるほど、柳川鍋か。でもこれはちょっと、いやかなり量が多い気がするが……」
「……ご覧の通り買いすぎてしまったんだよ」
慧音がピンポイントで後悔していたことを突いてくる。さすがは幼馴染といったところか。
再び、この量をどうしようかと思ったとき、目の前の慧音を見て僕の頭に1つの案が浮かんだ。
「そうだ、良かったら慧音。君も一緒にどうだい?」
「えっ!?」
僕が聞くと、慧音はビクッと上に乗っている帽子が落ちそうなほど驚いた。
慌てて慧音が帽子を手で押さえる。
「いや、そこまで驚かなくてもいいだろう?」
「いや、すまない。急に言われたからつい、な」
慧音が帽子の位置を整えながら言う。そんなに僕の誘いは意外なのだろうか。
「それで霖之助、その、鍋は霖之助のところでやるんだよな?」
「もちろん香霖堂さ。もしかして、予定が合わなかったかい?」
予定が合わないなら無理に誘う必要も無い。もともとは何日か食べ続ければ無くなる量だからだ。
……まぁ、その何日かが大変なのだが。
「いや、大丈夫だ。全然大丈夫だ。む、むしろいつでもどんと来いなくらいだっ」
僕の言葉を聞いた慧音がぶんぶんと手を振り否定する。……顔が紅いのはよく分からない。
とにかく大丈夫ならば、彼女にも参加してもらうとしよう。
「それは良かったよ。僕らじゃ今日だけでは食べきれないからね」
「……僕ら?」
急にピタッと止まった慧音が聞いてくる。……そういえば伝えていなかったか。
「今日の鍋のメインの泥鰌は朱鷺子が獲ってきてくれるらしい。
だから朱鷺子も一緒に食べることになっているんだよ」
「そ、そうか……なんだ……二人きりじゃないのか」
僕が伝えると慧音は急にガッカリとした感じになってしまった。
二人でなければいけない問題でもあったのだろうか。
「慧音? 何か不都合でもあったかい?」
「あ、その、そういうことじゃないんだ。ともかく相伴にあずかるとしよう。
すぐに準備をするから、今から付いて行っても大丈夫か?」
「構わないよ。ふむ、じゃあ僕は何処で待つべきか……」
この市場に居てもいいかもしれないが、人が多いので一度別れたらなかなか見つけにくいだろう。
かといって里に詳しいわけでは無いので、他の待ち合わせ場所もすぐには思いつくはずも無い。
僕がそう伝えると、慧音が案を出してくれた。
「それなら寺子屋で待っててくれないか? ここと私の家からも近いし、ちょうどいいだろう?」
「寺子屋、か」
あそこならそこまで時間も掛からないだろうし、久々に行くにはいい機会かもしれない。
「そうだね、そうさせてもらうよ」
「わかった。それではまた後で、寺子屋でな」
「あぁ」
そう言い、慧音は小走りで自分の家の方へと向かっていった。昔と変わらず考えたら一直線である。
「……さてと、僕も向かうとしよう」
買いすぎた材料を持ち直す。ズシリと重みが来るが、なんとも無いと自分の体に言い聞かせる。
日はまだ高い。少し時間が掛かっても夕餉の時間までに遅れる事はないだろう。
そう思いながら、僕もまた、さすがに小走りではないが目的地へと向かうことにした。
(……そういえば、朱鷺子は泥鰌を手に入れたのだろうか?)
(ここまでこたびさん)
飽きること無く照り続ける夏の太陽に、
私は手を伸ばして、そしてその眩しさに目を眩ませる。
水田と、そこに水を運ぶ為に設けられた用水路の間で、
私は飽くこと無く空を見上げていた。
家の中でただ太陽の暑さだけを感じていた時よりも、
こうして外で快晴の空を見上げていた方がいくらか気分は良い。
澄み渡った青いキャンバスに輪郭と陰影のハッキリとした雲が、
風の向くまま気の向くまま流されて行くのを見るのは、
夏の暑い日の中で数少ない私の楽しみの一つと言っていい。
だが何時までもこうして夏の空に想いを馳せている訳にもいかない。
私はこの場所に空を見る為に来た訳ではない、
勿論水田の様子を見に来た訳でもない。
確かにこの時期の水田は伸び始めた稲にとって大切な時期だ。
虫が付いたり、水が足りなくなったりすれば大変な事になる。
だがそれは今の、いや今で無くとも私の心配する事ではない。
水田の管理は農家に任せておけばいい。
私の目下の目標。
それはこの用水路で泥鰌を捕まえる事だ。
それもたくさん。
泥鰌さえ捕まえてくれば、霖之助が「やながわなべ」と言う泥鰌料理をご馳走してくれるらしい。
泥鰌は大好きだけれど、私は泥鰌を料理して食べた事がない。
と言うより余り料理をしない。
山では食材はそのまま落ちているものだし、
魚も生で食べるか、気分次第で塩焼きにするぐらいしか私は調理というものを知らない。
でも最近は違う。
香霖堂へ行けば霖之助が料理をご馳走してくれるし、
あの店には面白い本や道具がたくさんある。
霖之助は少し愛想が良くないけど、悪い人妖ではない。
多分自分の感情を他人に伝えるのと、他人の優しさを感じるのが少し下手なだけだろう。
そんな霖之助と一緒に居ると、私は楽しい。
明日はまた今日と違う事を教えてくれる。
彼は私の明日を昨日よりもっともっと楽しくしてくれる存在なのだ。
私は籠の近くに置いた網を手に持つと、そのまま用水路へそっと入れた。
余り激しく入水させると泥鰌が逃げてしまう。
そうして細心の注意を払いながら、私は柔らかく敷き詰められた泥の底を突っつく。
そして手応えと共に網を引き上げた。
畦に引き上げた網の中身を見ると、思ったとおり大量の泥鰌が、
泥まみれの体をヌルヌルと動かして、のた打ち回っていた。
私は思わずこぼれた笑を隠そうともせず、
網の中の泥鰌を籠の中へと入れた。
体に付着している泥は後で洗い流せばいい。
下手に今洗い流そうとすれば、この活きの良い泥鰌達は、
たちまち私の元から逃げてしまうだろう。
こうして捕まえた泥鰌を籠に入れて、また私は同じ様に網で泥の底を突付く。
次々と増える籠の中の泥鰌が面白くて、ついつい場所を変えて何度も行ってしまった。
「う、うわぁ、うじゃうじゃ……」
そんな事を繰り返すことおよそ半刻。
持ってきた籠の中はとても酷い事になってしまった。
泥鰌と泥鰌が絡みあいヌメリあい、ものの見事におぞましい光景を織り成している。
少し捕り過ぎたかもしれない。
いくら泥鰌が好物だと言っても二人でこんなに食べるのは難しいかもしれない。
いや、でも一度泥鰌を嫌という程食べてみたい気もするし……
でもでもそんな事を言って食べ残したら、せっかく頂いた命が勿体ないし……
でもでもでも逃がすのも……
頭の中で思考が始まり、終着点を見つけられずに始点に戻り、
また終点を探す為に出発して行く。
こんな状況を何と言うのだったか……
あぁ、そうだ、堂々巡りだ。
この前霖之助が教えてくれた。
うんうん、と私は頭を上下に振って納得する。
いや待て、目の前の状況への解決にはなっていないような気がする。
「やぁ、何か捕れるのかい?」
「ぐぁ!?」
腕を組んでぐぬぬと頭を捻っていた私に、
突然背後から声が投げかけられた。
突然の不意打ちに私は声を上げて驚いてしまった。
「あぁ、すまない。驚かせてしまったみたいだね」
「う、ううん。別に驚いてないしいいよ」
「……まぁ、君がそう言うのなら」
声のした方向へ振り向いて、私は同じ様に言葉を返す。
私に声を掛けたのは小さな体躯をした女の子で、
髪も、服も全部灰色をしていた。
丸い耳と細長い尻尾から、彼女がネズミの妖怪だと言う事はすぐに分かった。
そして手にはL字型の長くて大きい一対の棒を持っている。
何に使うのだろう、武器か何かだろうか。
「それで、何か捕れるのかい?」
「あーっと、えっと、うん。捕れるって言うよりは捕った後なの」
私は近くにある籠に指を差して答える。
女の子は籠の中を覗き込むと「うわぁ」と声を出して、苦そうな表情した。
泥鰌が苦手なのか、それとも泥鰌が大量にひしめき合っているのが苦手なのか。
どちらにせよ、この両方の状況を好ましく感じる女の子は少ないと思う。
そう考えると私は女の子だけど泥鰌が好きだから、少し変わっているのかな?
好きは好きでも、食べ物的な意味でだけど。
「凄いな……その、うん」
「そうなのよ、少し捕り過ぎちゃって。
こんなに食べきれなさそうだから、このまま逃がそうかどうか悩んでいたの。
あ、そうだ! アナタに少し分けてあげようか?」
「え、遠慮しておくよ。
その、私の住んでいる場所はお寺だから動物を食べてはいけないんだ……ははは」
引きつった笑いでネズミの女の子が言った。
女の子なのに変わった喋り方をする娘だ。
何だか霖之助によく似ている。
「あ、そう言えばまだ私の名前を言っていなかったわね」
「あぁ、そう言えばそうだ。すまない突然声を掛けておいて名乗りもせずに」
「ううん、お互い様だよ。じゃあまずは私から。
私は朱鷺子。本当は私の本名じゃ無いのだけれど、
みんながそう呼ぶからアナタもそう呼んでくれると嬉しいな」
「どうも。じゃあ次は私だ。
私はナズーリン。普段はダウザーをしている」
「ダウザー?」
「ダウザーと言うのはね、この二本のダウジングロッドを使って、
地下水や鉱脈を見つけたりする人の事を言うのさ」
そう言ってナズーリンは先程私が興味を惹かれた、
二本の棒「ダウジングロッド」を私の前に差し出して言った。
「へぇーそんな技術が有るんだ。今度霖之助に聞いてみよう」
「っむ、霖之助だって……あの店主の事か」
籠いっぱいの泥鰌を見た時と同じ様に、ナズーリンが顔をしかめた。
まるで口の中にセロリやパセリ、ピーマンと言った苦い野菜の代表を入れたみたいな表情だ。
「いや、少しね。あの店主の事だからきっと素直には教えてくれなさそうだよ?」
「そんな事ないよ。きっと霖之助なら優しく教えてくれるもん」
「どうかなぁ……まぁ、あの店主がそう言う趣味なら別だけど」
「そう言う趣味?」
「童女趣味さ」
「うーん、もしそうだったとしたらアナタもその範囲だと思うのだけれど」
勝ち誇ったように胸をはるナズーリンに私はこう言い返した。
彼女と私の身長は見たところそんなに変わらないようだし、
いや少し私の目線の方が高いから。私の方が身長は高そうだ。
「な! なんだとぅ! 言っておくけど私はこう見えて千年以上は……」
「とにかく、霖之助はそこまで酷い人でもないよ?
確かに愛想はあんまり良くないけど、物知りだし、
それに本当に根っこの部分では優しいよ」
「どうだか」
「むー何で分かってくれないかなぁー」
私にはナズーリンと霖之助の間に何があったかは知らない。
きっと余りよろしくない事があったのだろう。
見たところナズーリンはそんなに悪い妖怪でもなさそうだろうし、
霖之助もそうだ。
そんな二人がお互い(霖之助はどう思っているか知らないけど)啀み合っているのは、
何だか見ていて余り気持ちが良くない。
何か私に出来る事があればいいのだけれど……
私に出来る事……
「あ!」
「どうしたんだい? 急に大声なんか出して」
「ねぇねぇ! ナズーリンも泥鰌を食べにおいでよ」
「は!? どうしていきなりそうなるんだ!
大体私の住んでいる場所はお寺だから動物はダメって……」
「住んでいるところじゃなきゃいいんじゃない!
一緒に香霖堂へ行こうよ!」
私は急いで網と泥鰌で一杯の籠を持つと、ナズーリンの手を引いて歩き出した。
「ちょっと! 止めるんだ! 別に私は!」
「いいから! みんなで食べたらきっと美味しいし、誤解も解けるよ」
「だーかーら! 私は誤解なんか! うわ! 泥が飛んできたペッペ!」
元々二人で食べきれるかどうかも不安だったんだ、
今更一人や二人増えたところでどうって事無いだろう。
私はナズーリンの手を引きながら、空へと飛び上がった。
相変わらず元気な太陽が私達を含めた地上の全てを見つめている。
ただ呆然と過ごすだけなら、夏は長くてとても退屈だ。
けれどもその夏を精一杯過ごすとなると、今度は短すぎる。
そして、その夏はとても楽しいものになる。
(ここまで十四郎さん)
寺子屋で待つこと約三十分。駆け足でやってきた慧音の様子は先程と比べると明らかに変わっていた。
口紅でほのかに朱色になった口元。
少し白くなった顔。
なにより今まで霖之助でも見た事のないようなフリルの入ったワンピースのような服を着ていた。
「……心なしか変わってないか?」
「…………」
――そして霖之助の第一声に絶句するしかない慧音。
「はぁ……まぁお前のそういう部分は嫌いじゃないが……外見とお洒落は違うからな?」
「? ――よく分からないがとりあえず準備が出来たなら行こうか。もうすぐ朱鷺子も帰ってくる頃だろうしね」
「そうだな。あの辺りは夕方でも妖怪とか結構出るがまだ時間はあるし大丈夫だから話ながらゆっくり歩くとしよう」
そこからさらに三十分後――。
「あぁ~……やっぱりさっきの台詞フラグだと思ってたんだよ……」
「すまないな、霖之助ェ……」
「謝る気ゼロだろ」
霖之助の背負った荷物を狙った妖精・毛玉・低級妖怪達が二人を囲んでいた。
「このぐらいの数なら私一人でもなんとかなるが……お前を守りながらだとなる……と?」
霖之助を庇うように臨戦体勢をとる慧音の目の前で、五匹並んでいた毛玉の姿が一瞬で消えた。
何がなんだか分からないが、とにかく霖之助の安否を確認するために後ろを振り向くと
拳銃を持った霖之助が毛玉がいた場所に銃口を向けていた。
「護身用の退魔銃と護符だ。足は引っ張らないから君は好きなだけ暴れてくれ」
「そうか。護符があるなら遠慮する必要はないな。
時間もおしている……久しぶりに本気でいかせてもらおう!!」
一方、二人が大乱闘を繰り広げている間、香霖堂ではナズーリンと朱鷺子が着々と鍋の準備を進めていた。
「遅いなぁ~、もうほとんど終わったのにぃ」
「君の気が早すぎるんだよ。まだ日没にもなってないのに……」
夕日を見ながらナズーリンがぼやくが朱鷺子は特に嫌な様子を見せていない。なぜなら……
「自分の方がノリノリだったじゃん……」
「何か言ったかい?」
「なんにも……って、あっ!やっときた!!」
朱鷺子が遠くの方を指差し、それにつられるようにナズーリンもそちらの方を向く。
「あれぇ~~? なんか慧音がいる?」
「あ゛ぁ~疲れた……。僕にあれだけの運動はキツいって……」
「全くだ。まさかあのタイミングで来るとは思わなかったしな」
霖之助と慧音がやってくるのをみて、朱鷺子は彼に駆け寄った。
「(ねぇ……材料多くない? ついでに人数も増えてない?」
朱鷺子が霖之助に向かって駆け寄ると彼にだけ聴こえる声で言った。
「(ああ、市場で偶然会ってね。……って、そっちも増えてるじゃないか)」
「ちょっと! 二人共なにヒソヒソ話してるのか知らないけど早く始めましょう!!」
「分かった。分かったから腕引っ張らないでくれ……! 身体中が悲鳴上げてるんだから」
こうして、騒がしい柳川鍋パーティーが始まった――。
(ここまでイッシーさん)
「そういえば、霖之助に言われるまま準備したんだが」
鍋を火にかけ、皿を配り終え。
すっかり食事の準備が整った頃、慧音がふと疑問を発した。
僕から見て左側に朱鷺子が座り、右側に慧音、正面にナズーリンが腰掛けている。
「朱鷺子は卵を食べられるのか?」
「うん、食べるよ? なんで?」
「いや……」
あっさりと応えられ、慧音は少し驚いた表情を浮かべる。
そう言えば、地底の烏も温泉卵が好物だと聞いたことがあるが……。
無精卵ならいいのだろうか。
もしくは、別種族なら……?
気になるところだが、考えてもわからないので諦めることにした。
あまり深く考えることでもないのかもしれない。
「そう言えば、泥鰌を使った鍋と言えば地獄鍋もあったね」
「地獄鍋?」
「ああ」
火にかけられている鍋が、クツクツと音を立てる。
鍋の下には外の世界の便利な道具、カセットコンロ。
先日早苗から使い方を教えてもらって以来、活用している道具だ。
魔法の火炉でも似たようなことはできるのだが、こちらのほうが楽でいい。
「鍋に水と生きたままの泥鰌を入れて火にかけるんだ。
煮立ってきたところに豆腐を入れると、泥鰌が冷たい豆腐に逃げ入ろうとして、
そのまま豆腐と一緒に煮え上がるって料理でね」
確か落語の題材にもなっていた気がする。
「周りからは湯豆腐を食べているようにしか見えないため、
肉食ができなかった僧侶が好んで食べていたらしいんだが」
そう言って僕は、正面に座る少女に目を向けた。
「ナズーリンは大丈夫なのかい?」
「ああ、もちろんうちの寺は肉食を禁止しているよ。
……建前上はね」
ナズーリンは肩を竦め、彼女独特の表情で笑う。
「そんな制約は修行をしている人間が守ればいいだけさ。
ただの鼠にはまったく関係ない話だね」
彼女は言いながら、鍋に視線を移す。
なんだかんだで楽しみにしているようだ。
そんなナズーリンを、朱鷺子は楽しそうに見ていた。
「ああもちろんご主人様たちにも持って帰るつもりではいるよ。
土産話を、たっぷりと」
「……朱鷺子、友達は選んだほうがいいよ」
「えー、ナズーリン、面白いのに。
ちょっと霖之助に似てるし」
「ちょっと待ってくれ。
いつの間に君の中でそんな位置付けになってるんだい」
ナズーリンは慌てて立ち上がりかけ……僕をキッと睨みつけてきた。
「そうか、君の入れ知恵だな。
卑怯だぞ、霖之助君」
「なにを言うんだね。
今のやりとりだと、むしろ被害者は僕だろうに。
……朱鷺子に変なこと吹き込まないでくれよ」
「そんなことはしない。
まあ、せいぜい霖之助君が童女趣味じゃないかと話したくらいかな」
「なんだと」
鍋を挟んでナズーリンと口論。
そんな僕らの姿を見ながら、朱鷺子は笑っていた。
「心配してたけど、仲いいね」
「まさか」
「心外だな」
同じタイミングで、同じ反応。
……ちょっと気まずい。
それはナズーリンも同じだったらしい。
「わかったかい? あれが喧嘩するほど仲がいいというやつだよ」
「うん」
慧音は微妙に苦い笑いを浮かべながら、朱鷺子に説明していた。
……その意見には異を唱えたいところだが。
「慧音も霖之助と喧嘩するの?」
「…………」
朱鷺子の問いに、慧音は助けを求めるようにこちらを見てくる。
……そんな目で見られても、困る。
「ハハッ、おかしなことを言うからだよ、慧音君」
「う……」
ナズーリンの言葉に、絶句する慧音。
そのやりとりに、ふと疑問が浮かんだ。
「慧音はナズーリンと知り合いだったのかい?」
「ああ、寺を建てる時に挨拶にな」
そういえば、ナズーリンの寺にはよく人間が訪れているらしい。
なるほど、最初から慧音を味方に付けるほうが得策、ということだろうか。
「地盤固めは信仰の基本だよ」
……ぜひその言葉を霊夢に聞かせてやって欲しいものだ。
「さて、そろそろ煮えた頃かな」
タイミングを見計らって蓋を開け、慧音が火の通りを確認していく。
朱鷺子たちが泥を抜いていてくれたおかげで、泥鰌は開かずそのまま入れていた。
見た目はアレだが、味はいいはずだ。
「わぁ、おいしそう」
いい感じに煮えた鍋に、朱鷺子が歓声を上げる。
「じゃあナズーリン、器を貸してくれ」
慧音は手際よく三つ葉を散らし、完成。
まずは客の器から盛っていく。
「ほら、霖之助」
「ああ」
彼女に言われ、霖之助も器を差し出した。
……これは確かに、スタミナがつきそうだ。
食べなくても平気な体質と言っても、食べるのは楽しみのひとつである。
夏バテなんかは予防するに越したことはない。
「はい、朱鷺子」
「……ゴボウがたくさん」
「ちゃんと好き嫌いせず食べるんだぞ」
慧音は笑顔でそう言うと、最後に自分の皿によそった。
全員に行き渡ったところで、朱鷺子が手を合わせる。
「いただきます」
そう言うや否や、素早く箸を手に取った。
そして泥鰌を掴み、そのまま口へ。
「あちち」
「ほら、慌てるからだ。
ああもう、こんな所にも付いてるぞ」
「逃げないから、落ち着いて食べるといい」
そんなやりとりに苦笑しつつ、僕も箸を進める。
……なるほど、美味い。
「泥鰌はまだまだあるよ。
朱鷺子君が取ってきたやつがね」
「……しかし、多すぎやしないか」
「うん。頑張ったよ」
輝かんばかりの笑顔を浮かべる朱鷺子を、僕はゆっくりと撫でる。
見ているほうが楽しくなるような、そんな笑み。
「しかしこんなにあるなら別の料理も作ればよかったな。
この前ミスティアに上手な蒲焼きのやり方を聞いてきたんだが……」
「なんだと」
瞬間、慧音が怖い目で睨んでくる。
……なにがそんなに逆鱗に触れたというのか。
「あ、私もいたよ、その時」
「なんだと」
なんだと、のニュアンスが若干違う気がした。
なにが違うのかは、わからなかったが。
「霖之助、こんな子供を夜の店に連れ出したというのか」
「いいじゃないか。
それにその言い方は誤解を招くよ」
「えー、ミスティアは友達だからいいじゃない」
「しかしだな……」
苦い顔を浮かべる慧音に、ナズーリンが口を挟んだ。
「そうならないように、しっかりと見ててやればいいじゃないか」
「……うむ、まあな」
「それが親の役目というやつだよ」
満足げに頷くナズーリン。
そしてすぐさま鍋に戻る。
……ん?
「ナズーリン、何か勘違いしていないか?」
「ああ、言わなくてもわかっている。
君たちの関係のことだろう?」
早々と2杯目のおかわりに手を伸ばしながら、ナズーリンは答えた。
説明した覚えがないため不安だったが、一応わかっているらしい。
「最初は本当の親子かと思ったんだがね。
よく考えたら違うとわかった。
つまりはまあ、親子みたいなものなんだろう?」
そう言って僕と慧音、それから朱鷺子の髪を見比べる。
親子、か。
この銀髪のせいだろうか。
「だがいい土産話ができたよ。
聖が聞いたら喜びそうだ」
「……土産話?」
「ああ。
こんな所に聖の理想が体現されてたとはね」
なんだか雲行きが怪しくなってきた気がする。
そんな僕の心情を無視して、彼女は言葉を続けた。
「半人半妖と半人半獣の夫婦に、妖怪の養子だろう?
きっと泣いて喜ぶと思うよ。いやあ目に浮かぶね」
よかったよかったとばかりに頷くナズーリン。
「……まずはどこから説明したものかね」
激しく咳き込む慧音を隣に、僕はこの事態をどうやって収拾しようか頭を悩ませるのだった。
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No title
はしゃぐ朱鷺子と振り回されるナズーがかわいい。
収拾・・・頭悩ませる必要なくね?
ナズーリンには是非里の人達に噂を
広めてもらわないといけませんね(キリッ
収拾・・・頭悩ませる必要なくね?
ナズーリンには是非里の人達に噂を
広めてもらわないといけませんね(キリッ
No title
何この豪華布陣・・・キュン
長めで面白かったです!
長めで面白かったです!
No title
こういう話好きです~
…しかし、道草さんもリレーやってたのですね~
僕は天狗であると同時に司書も兼ねていて、今はなのはのリレーに参加しています。
ちなみに初のSSでしたw
…しかし、道草さんもリレーやってたのですね~
僕は天狗であると同時に司書も兼ねていて、今はなのはのリレーに参加しています。
ちなみに初のSSでしたw
No title
渋話で申し訳ないですが、
ある人の書いた慧朱鷺霖絵とかもう完全親子でしたしね。
ナズーリンが勘違いというかそう思っても致仕方ないですね
ある人の書いた慧朱鷺霖絵とかもう完全親子でしたしね。
ナズーリンが勘違いというかそう思っても致仕方ないですね