子悪魔シリーズ04
このシリーズはあくまでパチュ霖だと言い張る。
僕の中での小悪魔像がもう揺らがなくなって参りました。
あとぱっちぇさんも。
霖之助 パチュリー 小悪魔
「お父様って非道いですよね」
図書館に入るなり、小悪魔はそう断言した。
力なく床に座り、まるで泣いているような仕草で。
しかも、これ見よがしに彼女がいるのは入り口の目の前だ。
「ああ、なんて冷たいんでしょう。
昨日一日、私がどんな気持ちで待っていたことか……。
それにいつまで経っても愛をくれないし。
あんなにお願いしたのに~」
無視したい。
見なかったことにして読書に耽りたい。
聞かなかったことにしてお茶を飲みたい。
しかし霖之助の読む本はすべて彼女が管理していた。
本を返すにも新しく借りるにも、図書館内で読むにも小悪魔を通す必要がある。
自分で取ってきてもいいのだが、この広い図書館で目当ての本を
ノーヒントで見つけることなど不可能に近いし、何より戻ってこられる自信がない。
「なんてかわいそうなわ☆た☆し☆」
つまり、霖之助はこの状態の彼女に話しかけなければならないわけで。
「……はぁ」
頭が痛くなってきた。
助けを求めようにも、図書館の主は我関せずの構えだ。
顔を上げないどころか、やってきた霖之助を出迎える気配もない。
……まあそれはいつものことだし、そもそも出迎えるのは小悪魔の役目なのだが。
当の本人がこの状態である。
霖之助は再度のため息とともに小悪魔に向き直った。
前もこんなことがあった気がする、と思いながら。
「それで、僕が何かしたかな?
ついでにこの本の続きをだね」
「逆です。何もしなかったんです。
お父様、昨日という日に私に何か言うことは無かったんですか?」
霖之助の問いを完全に無視して、小悪魔は霖之助に強い視線をぶつけてきた。
「昨日……ね」
考え、記憶を辿る。
しかし何も答えが出てこない。
「全く心当たりがないな」
「やっぱり忘れてる~!」
さめざめと泣く小悪魔。
今度は本気のようだ。
「昨日は私の誕生日だったんです!」
「……そうだったかい?
と言っても、僕は君が生まれた瞬間に立ち会ったわけじゃないからわからないんだが」
そもそも何十年前の話だろうか。
去年何も言ってこなかったのに今年になっていきなり言い出されても困る。
と言っても、去年はまだいろいろと知らなかったわけではあるが。
「正確にはお父様とお母様の初えっち記念日ですけど。
たいして誤差はないから問題ないですよね」
「前提から違うじゃないか。
というかね、わざわざそんな日にちを覚えてるわけが」
言った瞬間、小悪魔が驚いた表情を浮かべた。
すぐあとに、怒った顔。
「あー、今のはほんとに非道いですよ、お父様。
デリカシーなさ過ぎです。女の子には記念日が必要なんですよ!
パチュリー様もお怒りです」
「いや、その記念日は君が言いだしたこと……じゃないのかい?」
恐る恐る、七曜の魔女へと視線を向ける。
一見して変わったところはない、いつも通りのパチュリーだ。
会話は聞こえていたようだが、覚えていなかったことに怒っている様子は……ないと思う。
たぶん。
「あ、初えっちで思い出しましたけど」
先ほどの怒りもどこへやら、小悪魔がポンと手を叩いた。
どうしてそんな単語で思い出すのか。
しかもそんなもので思い出す話題など、ろくなもではないに決まっている。
「お父様ってすごいですよね」
「……いや、そっちも心当たりがないんだが」
この状態でその評価。
どう考えても素直に喜べる類のものではないことはすぐにわかる。
だからと言って、聞かないわけにはいかないだろう。
まだ、本を返してないのだから。
「だって感覚が繋がってるって私が言ったその日だというのに、
ふたりでネッチョネッチョと盛り上がってましたし」
「……ちょっと待ってくれ」
霖之助はこめかみを押さえながら、パチュリーに向き直る。
「パチュリー、一応僕は確認したと思うんだが」
「ええ、言ったわよ。大丈夫だって」
そこでようやくパチュリーは霖之助と視線を合わせた。
紫の髪が服と擦れてしゃらりと音を立てる。
「だってそうでしょう?
私は気にしないから大丈夫」
無気力そうな瞳で、たいしたことでもないと言わんばかりに言い切るパチュリー。
「あれ、てっきりお父様も知ってるものだと思ってたんですけど。
それで、いつもより激しかったから実はそう言う趣味なのかなーって。
あ、じゃあ激しかったのはパチュリー様がそういう」
すべての言葉を言い終わる前に、小悪魔の姿は床下へと消えていった。
パチュリーが手を鳴らした瞬間、床に穴が開いたのだ。
ご丁寧にスライム状の重り付きで。
「ああっ、白くてネバネバしたものが身体中にぃ~……」
小悪魔の声は、やがて聞こえなくなった。
どこまで落ちていったのだろう。
……あえて考えないことにする。
「座ったら?」
「あ、ああ」
パチュリーに促され、霖之助はようやく席に着いた。
あまりのことに、今まで立ったままだということを忘れていたらしい。
「……しまったな」
静かになったのはいいのだが、読む本がない。
手元にあるのは返すために持ってきたものであり、既に読んだあとだ。
司書の役目もしている小悪魔は、今ここにいないわけで。
ここから歩いていける範囲にある本はだいたい読んだ気がするし……。
「本がないの?」
「ああ、困ったことにね」
同じ本を読み返すのもまあ、悪くはないのだが。
どうしようか迷っていると、パチュリーが声を上げた。
「じゃあ、一緒に読む?」
確かに彼女が今読んでいる本は霖之助も読んだことがないものである。
しかし一冊の本をふたりで読むとなると、それなりにくっつく必要がある。
まあ、今更気にするほどのことではないのだが……。
「それとも……」
パチュリーは霖之助の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「もうひとりくらい、作ろうかしら。
……使い魔じゃなくても、私は構わないんだけど」
僕の中での小悪魔像がもう揺らがなくなって参りました。
あとぱっちぇさんも。
霖之助 パチュリー 小悪魔
「お父様って非道いですよね」
図書館に入るなり、小悪魔はそう断言した。
力なく床に座り、まるで泣いているような仕草で。
しかも、これ見よがしに彼女がいるのは入り口の目の前だ。
「ああ、なんて冷たいんでしょう。
昨日一日、私がどんな気持ちで待っていたことか……。
それにいつまで経っても愛をくれないし。
あんなにお願いしたのに~」
無視したい。
見なかったことにして読書に耽りたい。
聞かなかったことにしてお茶を飲みたい。
しかし霖之助の読む本はすべて彼女が管理していた。
本を返すにも新しく借りるにも、図書館内で読むにも小悪魔を通す必要がある。
自分で取ってきてもいいのだが、この広い図書館で目当ての本を
ノーヒントで見つけることなど不可能に近いし、何より戻ってこられる自信がない。
「なんてかわいそうなわ☆た☆し☆」
つまり、霖之助はこの状態の彼女に話しかけなければならないわけで。
「……はぁ」
頭が痛くなってきた。
助けを求めようにも、図書館の主は我関せずの構えだ。
顔を上げないどころか、やってきた霖之助を出迎える気配もない。
……まあそれはいつものことだし、そもそも出迎えるのは小悪魔の役目なのだが。
当の本人がこの状態である。
霖之助は再度のため息とともに小悪魔に向き直った。
前もこんなことがあった気がする、と思いながら。
「それで、僕が何かしたかな?
ついでにこの本の続きをだね」
「逆です。何もしなかったんです。
お父様、昨日という日に私に何か言うことは無かったんですか?」
霖之助の問いを完全に無視して、小悪魔は霖之助に強い視線をぶつけてきた。
「昨日……ね」
考え、記憶を辿る。
しかし何も答えが出てこない。
「全く心当たりがないな」
「やっぱり忘れてる~!」
さめざめと泣く小悪魔。
今度は本気のようだ。
「昨日は私の誕生日だったんです!」
「……そうだったかい?
と言っても、僕は君が生まれた瞬間に立ち会ったわけじゃないからわからないんだが」
そもそも何十年前の話だろうか。
去年何も言ってこなかったのに今年になっていきなり言い出されても困る。
と言っても、去年はまだいろいろと知らなかったわけではあるが。
「正確にはお父様とお母様の初えっち記念日ですけど。
たいして誤差はないから問題ないですよね」
「前提から違うじゃないか。
というかね、わざわざそんな日にちを覚えてるわけが」
言った瞬間、小悪魔が驚いた表情を浮かべた。
すぐあとに、怒った顔。
「あー、今のはほんとに非道いですよ、お父様。
デリカシーなさ過ぎです。女の子には記念日が必要なんですよ!
パチュリー様もお怒りです」
「いや、その記念日は君が言いだしたこと……じゃないのかい?」
恐る恐る、七曜の魔女へと視線を向ける。
一見して変わったところはない、いつも通りのパチュリーだ。
会話は聞こえていたようだが、覚えていなかったことに怒っている様子は……ないと思う。
たぶん。
「あ、初えっちで思い出しましたけど」
先ほどの怒りもどこへやら、小悪魔がポンと手を叩いた。
どうしてそんな単語で思い出すのか。
しかもそんなもので思い出す話題など、ろくなもではないに決まっている。
「お父様ってすごいですよね」
「……いや、そっちも心当たりがないんだが」
この状態でその評価。
どう考えても素直に喜べる類のものではないことはすぐにわかる。
だからと言って、聞かないわけにはいかないだろう。
まだ、本を返してないのだから。
「だって感覚が繋がってるって私が言ったその日だというのに、
ふたりでネッチョネッチョと盛り上がってましたし」
「……ちょっと待ってくれ」
霖之助はこめかみを押さえながら、パチュリーに向き直る。
「パチュリー、一応僕は確認したと思うんだが」
「ええ、言ったわよ。大丈夫だって」
そこでようやくパチュリーは霖之助と視線を合わせた。
紫の髪が服と擦れてしゃらりと音を立てる。
「だってそうでしょう?
私は気にしないから大丈夫」
無気力そうな瞳で、たいしたことでもないと言わんばかりに言い切るパチュリー。
「あれ、てっきりお父様も知ってるものだと思ってたんですけど。
それで、いつもより激しかったから実はそう言う趣味なのかなーって。
あ、じゃあ激しかったのはパチュリー様がそういう」
すべての言葉を言い終わる前に、小悪魔の姿は床下へと消えていった。
パチュリーが手を鳴らした瞬間、床に穴が開いたのだ。
ご丁寧にスライム状の重り付きで。
「ああっ、白くてネバネバしたものが身体中にぃ~……」
小悪魔の声は、やがて聞こえなくなった。
どこまで落ちていったのだろう。
……あえて考えないことにする。
「座ったら?」
「あ、ああ」
パチュリーに促され、霖之助はようやく席に着いた。
あまりのことに、今まで立ったままだということを忘れていたらしい。
「……しまったな」
静かになったのはいいのだが、読む本がない。
手元にあるのは返すために持ってきたものであり、既に読んだあとだ。
司書の役目もしている小悪魔は、今ここにいないわけで。
ここから歩いていける範囲にある本はだいたい読んだ気がするし……。
「本がないの?」
「ああ、困ったことにね」
同じ本を読み返すのもまあ、悪くはないのだが。
どうしようか迷っていると、パチュリーが声を上げた。
「じゃあ、一緒に読む?」
確かに彼女が今読んでいる本は霖之助も読んだことがないものである。
しかし一冊の本をふたりで読むとなると、それなりにくっつく必要がある。
まあ、今更気にするほどのことではないのだが……。
「それとも……」
パチュリーは霖之助の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「もうひとりくらい、作ろうかしら。
……使い魔じゃなくても、私は構わないんだけど」
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No title
パチュ霖が俺の中で鰻登りなのはこのサイトとせいだと確信した
No title
上に同じ
No title
さらに上に同じ
さらにさらに上に同じ
そしてリバースカードを3枚セットしてターンエンドだ!
No title
↑ののりのよさに吹いたwwまぁ自分もですけどw
No title
今さらですが・・・
↑ノリよすぎだろwwwwwww
やはり・・・天才・・・
パチェが可愛すぎると思うんですが、どうでしょう
↑ノリよすぎだろwwwwwww
やはり・・・天才・・・
パチェが可愛すぎると思うんですが、どうでしょう
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